亮の日記

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昨夜、だんな様は帰ってこられませんでした。
遅くまで飲み過ぎて帰るのが億劫でホテルに泊まるから、明日の着替えを持って来いと巽さんに連絡がありました。
ちょうど屋根裏部屋でシャンパンを飲み終えたところで電話がかかってきたのです。
僕はお酒のせいで少し眠くなっていましたが、だんな様の着替えを用意して、巽さんに渡しました。
巽さんは屋敷に泊まるはずだったのですが、タクシーでホテルに向かい、その後自宅に帰ることに。

「一応、私は迅の部下だしね。明日の朝食を亮と一緒にとれると楽しみにしていたのに…
全く、無粋で我が儘なやつだよ」

僕は巽さんがお疲れにならないか心配でしたが、仕方ありません。
「亮も明日の朝はゆっくりしなさい」
そう言っていただいたので、屋敷で働いている人たちみんなも今朝は少しゆっくりさせて頂きました。
でも、午後からはいつもの通り。
昨夜飲み過ぎただんな様のために、板井さんと一緒に身体に優しい献立を考えました。
昔よく板井さんは、僕の具合が悪いときに胃に優しい物や少量でも栄養たっぷりの食事をつくってくれました。
シェフなので料理が上手なのは当たり前ですが、気配りもとても上手です。