「ちょっと…なんでみんな何も話さないんですか!?何のために…いや、元気かとか仕事はどうだとか、社会人の会話くらいしたらどうです!?」
 静音(しずなり・三男)に、メシ奢るからついてこい、と言われてホイホイついてきた栞原は、真柴家三兄弟に囲まれるのは良いとしても、一切会話もなく黙々と食べる事に耐えきれなくなり、ついに言葉を発した。
「うちはいつもこんな感じだぜ?」
「だいたい、今日は何のために集まったんですか?目的くらいあるでしょう??」
 三兄弟はお互いに顔を見合わせて首をかしげた。
「誰が言い出したんだ?」
 と言ったのは音夜(おとや・長男)
「俺じゃないぞ」
 と答えたのは月音(つきなり・次男)
「俺だ。響の彼氏は可愛いな、と思ったんだ」
「「ああ」」
 音夜と月音が口を揃えて同意をして、そしてまた黙々と…
「それだけ!?」
 静音はちらっと栞原を見て、ため息をついた。
「さっきから素っ頓狂な声ばかり出すな。もっとこう、凰雅君みたいに柔らかい口調で話せ」
「「ああ」」
「はぁっ!?」
 
 
 長男の音夜は35才。医学部を卒業して十年、やっと一人前になったばかりで未だ独身。そろそろ見合いでもするかと考えていたところだったが、末っ子が男に走り、その相手が意外と可愛らしかったので婚活にかける意気込みが尻すぼんでしまった。ゲイではないと思うが、凰雅のような男の子だったらいけるかも知れないと思い始めた。
 次男の月音は31才。何度か見合いをさせられたが、女子校勤務で女の怖さを知り尽くしていたため、結婚するのがなんとなくめんどくさくなった。男の同僚と話している方が気が楽、と言うことは自分にもその気があるのかも…と思い始めた。
 三男の静音は29才。体育会系の男っぽい容姿で、三兄弟の中では一番年上に見える。一応これでもキャリア組で警視庁刑事部捜査第一課に勤める警視正だったりする。そう見えない容姿と考え方はどこの所轄の刑事課でも喜んで迎え入れられるそうだ。末っ子が凰雅を連れて現れたのはある事件の捜査のために訪れていたとある警察署で、容赦なく蹴りを入れる美青年と戯れる様は語りぐさの一つになった。


 この三兄弟が、末っ子四男の男の恋人に魅せられてしまった。
 三人とも女っ気が無かったわけではないが、男優勢の実家でただ独りの女性である母に良いように振り回されたせいもあって、女はできるだけ放置するのが良いと思うようになった。構いたいと心底思わなかった事もあるが、凰雅と会って、最初から可愛い、守りたい、構いたい、と思ったのは初めてだった。
「お前の患者には線が細くて柔らかそうなのがいそうだな…」
 と月音(次男)。
「…俺の担当にはいない。今度病棟全体を回ってみよう…」
「お前は、そっちの栞原君とはどうなんだ?いつもセットになっているようだが…」
 また月音。
 栞原は食べていたチャーハンを口から吹いた。
「ぶふぉっ!んぐっ…げほっげほっ!…ぐぇっほっ!」
 静音は別に取り乱す事もなく栞原を見つめてみた。
「そういや…大人しく黙っていたらいい男だな」
「真柴刑事!!俺帰りますっ!ごちそうまっす!!」
 急いで席を立ち上がろうとする栞原に足を引っかけたのは長男で、うわっっ!と言いながら転ぶ前にがっしり抱き締め受け止めたのは三男。さすが兄弟で、息もピッタリ合っている。
「うわーっ!!真柴さん!!離してくださいっ!俺不味いからやめた方が良いっす!」
「不味いかどうかは食ってから決める。俺はもう帰るぜ。兄貴たちも試してみたかったら2丁目行ってみな」
 耳に馴染みのない男の悲鳴を聞きながら、真柴三兄弟+栞原はレストランを後にした。

おわり。。。

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この後は…ご想像にお任せします。こんな俺様ファミリー嫌だ(笑)

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Love Piano

おまけ

ある日の三兄弟+1人