ニューヨークに笹はない。と思う。
 仕方がないので何となく笹っぽい、長い葉をもつユーカリの枝を買おうかと、大きな花屋の中を何度も行ったり来たりしてみた。店員に聞いてみようにも、竹なら分かるけれど笹は英語で何というのか分からない。竹もないので、英語が分かったところで無駄なような気がした。
 ユーカリの前で小さくため息をつき、意を決したように振り向いた沙希は店員のいる方へ視線を向けた。
 大きなリムジンから付き人と共に降りて来た日本人形に気安く話しかけて良いものかどうか迷っていた店員は、出番が来た、とばかりにニコニコしながら近づいて来る。
「気に入ったものはありましたか?」
「えと…これ下さい。ユーカリ?コアラが食べる葉っぱ?」
「無農薬ですから食べても大丈夫ですよ」
「どうやって食べるの?」
「煮込み料理の香辛料としてもいいし、紅茶に少し入れても良いし、お風呂に入れても良いんですよ。ほら、良い香りがするでしょう?」
 店員が一枝引き抜き、手で擦るようにした後、沙希の鼻先に持ってきた。
 息を吸い込むと、すーっとした清涼感のある香りが鼻孔に広がり、気分も爽やかになる。
「ほんとうだ!すっとしますね」
「お風呂に入れて蒸気を吸い込んだり、疲れた部分をマッサージしたり、とっても気持ちいいですよ」
「じゃあこれ…全部下さい!」
 

 二時間以内に自宅まで届けてくれるというので配達を頼み、その後沙希は文具を扱う大きな店に入った。色の付いた紙を買いまくり、金の紙や銀の紙も大量に買う。家にある物で足りそうになかったので、はさみと糊も買う。
 普段は無駄遣いなどしないが、今日は特別な日だった。クリスマスより、お正月より、園部の誕生日より、もしかしたら両親の命日よりも大切な日。
 園部と初めて出会った、七夕の日。


 必要な物を買いそろえすぐに帰る。まだユーカリは届いていなかったが、飾り付けや短冊の準備もしなくてはならない。料理部隊だけ外し、家にいる全組員にはさみと糊を手渡し、沙希は指示を飛ばすべく広いリビングのど真ん中に仁王立ちした。
「みんな、今日は手伝いにきてくれてありがとう。はるさんには嘘をついたけど、今日は七夕の日で俺も学校をずる休みしました。日本の季節行事です。今から飾りを作ってもらいます。作り終わったらみんなもこの細長い四角い紙に願い事を書いて飾り付けしてください。飾りの作り方は今からプリントを配ります。みんなで沢山作ってください。じゃ、はじめ!」
 
 
 園部は七夕のことについて何も言わなかったので忘れているような気がする。忙しい大人の男だから忘れても気にしなかったが、沙希はどうしてもやらずにいられない。
 学校に行く振りをして、途中にあるスーパーの駐車場でリムジンを止め、園部が出社するのを待つ。園部の部下とは口裏を合わせており、部下達もサプライズ・パーティの類は好きだったので全面協力してくれた。兄も勿論協力してくれて、下っ端な為、今ここにはいないが、学校に欠席の連絡を入れてくれたのだ。
 園部が会社に着いた時点で運転手から連絡があり、沙希の慌ただしい一日がスタートしたのだった。


 広いリビングの、各自好き勝手な場所に陣取り、沙希が作った説明を読みながらしゃきしゃきと紙を切る。慣れてしまえば簡単で、出来上がった紙片を糊で繋ぐときに色を変えたりしてバリエーションを増やす。10人ほど手伝ってもらっているので、直ぐに大量のオーナメントが出来上がった。
 途中で花屋が来たのでリビングに運び込んでもらったが、黒いスーツの男達が色とりどりの紙で出来たオーナメントに埋もれている様子はどう映っただろう?
「来年も同じ事するので、また注文しますね」
 と言うと嬉しそうに帰って行った。
 来年は本物の笹が手に入ると良いな…と考えたところで、吉野さんに相談すれば良かった、と今更ながら悔やむが、ここまで来れば自分の力でやり遂げるしかない。沙希は拳を握って、まだ始まってもいないのに来年の七夕に思いを馳せるのだった。


「沙希さん、料理も出来上がったみたいです」
 施設にいた頃、七夕の日にはそうめんを食べた。錦糸卵やハム、星形にくりぬいた野菜を散らし、天の川のように飾り付けた物をみんなで箸を突っ込んで食べた。その他にも勿論、行事の時には必ず出てくる鶏の唐揚げ、トンカツなどもあった。今回ネットで調べたら、中国では七夕の日に『索餅』というのを食べる習慣があり、これは日本で言う『そうめん』らしい。それなら施設でそうめんを食べた事にも納得がいく。
 黒瀬組ニューヨーク本部の面々を思い浮かべるとほぼ全員肉食系なので、いくらなんでもそうめんだけでは泣きが入りそうだ。メインは豪華な飾り付けのそうめんだけれど、その他はしっかりとした味付けの肉、肉、肉…買い物部隊が買ってきた肉のかたまりを見たときはさすがに気味が悪かった。
「うわぁ…」
 さすがにまだそうめんは茹でていないが、脇役達は見事に盛りつけられている。沙希がお願いしたとおり、大小様々な大きさの星形でくりぬいたもの、笹の葉のようなもの、岩や小魚、美しい日本の川の風景が出来上がっていた。
「施設のみんな元気かな…施設の近くにね、渓流があって、鮎とかいたんだ。兄ちゃんも夏になると獲ってきて…食べさせてもらえなかった。売りさばいてたから…」
 朝早く釣りに行って、生きたままの鮎を都会のど真ん中で売り歩き、かなりの収入を得ていた。そのお金でおやつや欲しい物を買ってもらえたが、鮎も食べたかったな、と思い出す。
「鮎って、ニューヨークでも手に入りますか?」
 今日だけ特別に来てもらった、行きつけの和食レストランの大将に訪ねる。
「入りますよ。まあ冷凍物になりますけど。今度仕入れましょうか?」
「良いのかな、食べたいけど、俺が勝手に注文しても良いのかな…」
「園部さんなら良いって言いますよ、きっと」
 園部が自分のレストランに来るようになって何年くらい経つだろう。一緒に来る相手と言えば綺麗どころか胡散臭い連中ばかりで、いつか入店を断ってやろうと思っていたのだが、自分が食べたいがために珍しい食材や酒を勝手に持ち込み、そのうち仕入れルートも確保してくれた。追い出すどころか逆に取り込まれ、いつしか商売も思った以上に軌道に乗った。そして、この礼儀正しく美しい少年を店に連れてくるようになり…横柄で下品なエロオヤジなのは変わらないが、我が子以上に可愛がる姿を見ていると園部も少しは良いヤツだったんだなと、思い直した。この子が食べたい物と言ったら肉じゃが、カツ丼、唐揚げ、厚焼き卵…居酒屋メニューばかりだが、手の込んだ料理を食べさせると真っ黒な瞳をキラキラさせ、満面に笑みを浮かべて美味しいと言ってくれる。見た目や物腰は裕福な家庭の子のようで口も肥えているのかと思ったら、両親を早く亡くし、小さい頃から施設で育ったという。     どうりで何でも珍しがるわけだ。
 今日のことを相談されたとき、一も二もなく即答したのはこの子のためだ。あのヤクザ野郎のどこが良いのか知らんが、内緒にして驚かしたい、と言うところが気に入った。とても大切な日らしいのにあいつはすっかり忘れているらしい。健気なこの子のために、一肌脱ぐのにやぶさかではない。
 今後この子が食べたい物は何でも勝手に仕入れようと心に決め、大将は園部が帰ってきたらいつでもパーティを始められるように、そうめんを茹でるための大鍋に火を付けた。


 花屋で買ったユーカリは辺り一面に清々しい香りを振りまいていて、こんなに良い香りがするなら庭で育ててみようかな、等と考えながらせっせと飾り付ける。部下の中には外人もいて日本の紙細工が作れるか心配だったけど、みんな楽しそうで、慣れてくると個性溢れる物を作ってくれた。
 最後に皆に短冊を渡し願い事を書くように伝えると、みんな真剣に考えていた。沙希が書く言葉はもう決まっている。
 去年は七夕どころじゃなかったが、施設にいた頃から書くことは毎年決まっていた。
 沙希はリビングの床に正座し、短冊と筆ペンをきちんと並べて置いた。書く言葉は決まっていても、間違えないように頭の中で何度も繰り返す。筆ペンと短冊を手に取り、心を込めて、願いを書き綴る。
「よし。はるさんにも書いて貰ってから、一緒に飾ろう」
 願い事を書き込んだ短冊を丁寧に懐へ収め、園部の帰りを待つ。
 一年前の今夜、出会った。
 あの時のことを考えると不思議な気持ちになる。かっこいいな、とは思ったけど恋心が芽生えた分けではなかった。もっと別の、自分が目指す理想の男が現れた、憧れのスターや役者に出会ったような気持ちだったはずなのにそれが思い出せなくて、愛しい想いしか湧いてこないのだ。
 あのがっしりとした身体に抱き締められ、龍のかぎ爪に心を鷲づかみにされ、もっともっと溶け合いたいと、一年前には考えられなかった淫らで妖しい想いに体中を支配され…胸元をぎゅっと掴んでうずくまらなければ眩暈を起こして倒れそうだった。
「沙希さん、本部長が会社を出たそうです」
 園部の日本人の部下が、物思いに耽る沙希を現実に引き戻した。
「ありがとう。じゃあ俺、着替えてきます」
 園部に初めて買ってもらった着物は日本のおじいちゃんに洗ってもらった。それを着て迎えるのだが、園部は気付いてくれるだろうか?
 まるで新品のように綺麗になった着物に手を通すと、背筋がしゃきんとして、身長が伸びたような気がした。


「はるさん、お帰りなさい」
 一番古い着物を着て、艶やかな笑顔と共に園部の胸に飛び込んできた沙希を抱きとめる。お帰りなさいの挨拶は毎日違うが、今日の笑顔は一段と輝いている。
「何か良いことあったか?」
「うん。はるさんが帰ってきた」
「この野郎、いつのまにそんな男心をくすぐる台詞を覚えたんだ?」
「全部はるさんが教えてくれたんじゃない…」
 抱き上げてキスをすると、部下がいるというのに素直に応じてきた。いつもなら思いっきり胸を突っ張るのに…
「サービスも満点だな」
 抱き上げたまま歩き始めた園部が向かおうとしたのは二階へ続く階段方面だった。ちょっとだけ慌ててなんとかリビングへ方向転換させる。
「あ、はるさん、リビングに見てもらいたい学校の書類があるの。取りに行きたい」
「おう」
 あっさり方向転換してリビングに向かう。両手が自由な沙希が扉を開けると…
「「「「「「お疲れ様です!」」」」」
 野太い合唱が轟き、園部の足がハタ、と止まった。
「何やってんだ…てめぇら…」


 リビングに飾られている物を見まわした後、園部は腕の中にいる沙希にゆっくりと視線を戻す。
「これ…七夕か…」
「…うん」
 沙希は黒目を光らせながら、それ以上何も言わなかった。園部の口から聞きたい。
「…沙希…お前と、初めて出会った日だったな」
「うん!」
 覚えていてくれた…この場合、思い出してくれたと言うのが正解かもしれないが…嬉しくて仕方が無くて、園部の首にぎゅっと抱きつく。
「何時の間に用意したんだ?」
「…ごめんなさい…今日、学校さぼっちゃった…」
 園部は至極真面目な表情でしゅんとする沙希を見つめ、小言の一つでも言おうかと声を低くした。
「沙希、お前、勉強ちゃんとしないとまともな大人になれねぇんだぞ。それに…嘘は駄目だ」
「ごめんなさい…」
 園部はもう一段低い声で沙希の耳元に囁く。
「あとでたっぷりお仕置きするからな…」
 もう、その声の格好良さと、どんなお仕置きが待っているのか想像するだけで沙希の全身から力が抜けてしまった。
「はるさん…ごはん…食べよう。今日はご馳走なんだ…」
 園部の腕からすとん、と降りると、力が抜けていた沙希はそのまま床に尻餅をつきそうになった。身体の芯が疼いている…
「あ…あはははは」
 園部の腕に縋り付いて、這い上がるようにやっとこさ立ち上がったが、鋭い園部は沙希の腰が抜けた理由を直ぐに察した。元より、帰宅して園部に抱きついた瞬間から、沙希は園部を誘うフェロモンを垂れ流していた。
 沙希にとってこの日がどんなに大切な日になったか、園部はしっかりと胸に刻み込む。


 沙希は芸術的に盛りつけられたそうめんを前に、なんでこんな物を食べるのか、織姫と牽牛の話しをしたりネットで調べた事を説明した。スピーチは苦手だが英会話の勉強になるので出来るだけ皆の前で話すようにしているのだが…
「みんな分かってくれたかな?」
 隣で手を繋いでいてくれた園部を見上げると、ニッと笑ってウィンクを返してくれた。
「文法も発音もばっちりだ。よく頑張ったな」
「うん。もっとちゃんとしゃべれるようになりたい。でもね、兄ちゃんが、俺は日本語も子供っぽいからそれも直せって言われちゃった…」
「志貴の野郎、なめた口ききやがって」
「あー…そんなこと無いよ、兄ちゃんは俺のことを思って言ってくれたんだ、はるさんは優しすぎるから…」
「ふん、志貴が厳しすぎるんだ。自分のことを棚に上げやがって」
「兄ちゃん、元気にしてるかな…」
「まあ、あいつがバカやってくれたお陰で、沙希と出会えたんだもんな。少しはめぇかけてやるよ」
「はるさん、やっぱり優しい…」
 実際の所、兄の志貴は良くやっている。沙希の隣を歩くには園部の側近にまでのし上がらなければならない。そうなったらなったで南米事務所でも立ち上げてそこへ追いやろうかと園部は画策している。
「俺の優しさは沙希限定だ。おら、お前ももっとそうめん食え」
「はるさんも、今日は薄めてないブランデー飲んで良いからね」
 お前のが飲みたい、と口から出かかった園部だった。


 宴会もお開きの時間に近づき、最後に園部と沙希の短冊をユーカリの枝に結びつけることになった。園部は沙希から手渡された短冊に、考えることなくさらさらと願い事を書く。
 沙希も懐から短冊を取り出し、園部と二人、お互いになんと書いたのか見せあいこをする。
「あ…」
 園部の願い事を見た途端、沙希の顔が喜びで綻ぶ。

『沙希の願いが叶いますように』

「沙希はなんて書いたんだ?すぐに叶えてやるぞ」
 沙希は、嬉しすぎる時に良くやるのだが、小さく足踏みをしながら短冊を大事そうに握りしめている。
「これ…」
 少し落ち着くまで待っていたら、おずおずと短冊を園部の方へと差し出した。

『みんなの願いが叶いますように』

「最強だな」
「うん」
 園部が沙希を抱き上げ、ユーカリの枝の一番高いところに短冊を結わえさせた。
 そして沙希を降ろすと、自分の短冊は最も低い枝に結わえる。
「お前が皆を導け。俺が全てを支える」
 沙希の黒い瞳が見開かれ一段と強い光を放ったかと思うと、園部に飛びかかり太い首筋にがっちりと抱きついた。
「…うん」
 声は震えていたが、園部の首筋に顔をうずめていたので強い光りが光の反射だったのか涙の煌めきだったのか、園部には知る術がなかった。

「沙希…ここまで来て抵抗するか?」
 抱きついて離れなかったくせに、そのまま寝室へ運び込んでベッドに降ろそうとすると盛大な抵抗が始まった。
「だめ!まだ駄目!ここじゃ駄目!!」
「はぁ?」
「俺が考えた筋書きがあるの!」
 今日ばかりはのし掛かってきた園部を三角締めで固め、取りあえず話しだけでも聞いて貰う。
「今日たくさんユーカリの枝を買ったの!それって無農薬のヤツで…お風呂に入れて蒸気を吸って気持ちをすっきりさせたり、マッサージして疲れを解すんだって!!」
 三角締めから抜けようと藻掻いていた園部の力がふっと抜けた。大人しくなったようなので、沙希もすぐに技を解く。
「…ってえ…沙希…この野郎…って事は…」
 膝裏で締め上げられていた首筋をさすりながら、園部は大人しくベッドの上に座り直した。
「って事は…」
 ベッドから立ち上がりひとしきり首を回した後、沙希に向けて手を伸ばす。
「行くぞ、沙希」
 沙希も元気よく起きあがり、笑顔でその手を取った。


「ね…良い香り…でしょ…」
 切れ切れに出てくる言葉は、沙希がすっかりその気になってきたからか…
「ああ。気分が良い…」
 裸の腰を引き寄せると、沙希の硬く勃起した雄が園部の腹にあたった。
「んんっ…んっ」
 沙希の腰がくいっと淫らに動き、腹に擦りつける。湯が跳ねる音に沙希の震えるような吐息が重なり、浴室に響く。
 既に質量を増した園部の凶器は沙希が腰を揺らすたびに尻の谷間に擦りつけられ、園部の獣性を誇示している。
「沙希…」
 耳元で、それだけで吐精しそうな声で囁かれると、園部を身体の中に迎え入れる前から気が変になりそうだ。
「はるさんっ…あっ…はぁっ…ん」
 少しぬるめに設定した湯の中で、園部の指が沙希の後孔に執拗に触れ、ふしだらな身体を呼び覚ます。
「沙希…ここをぐちゃぐちゃにしたい」
「ん…ぁん…はるさ…」
 沙希はいつから欲情していたのか、いつものように時間を掛けなくても園部を迎え入れられる状態になっていた。
「いいか?」
 沙希の黒髪が前後に揺れる。
 園部は沙希の尻を抱え上げぐっと開くと獣の先端を蕾にあてがった。
「あ…」
 入れる瞬間は恐怖心があるのか、ほんの一瞬、沙希の黒目が不安に揺れる。不安はないのだ、この先にあるのは狂ってしまうような快感だけ…それを分からせるように、ゆっくりと、貫く。
「はあっ…ぁ…」
 前立腺の辺りは殊更ゆっくりと圧するように、通り過ぎたところで少し抜き、またズブズブと押し入れる。最奥に到達する寸前で挿入を止め、一呼吸置いた後に一気に突き刺す。
 沙希の身体が反動で仰け反り、艶やかな黒髪が宙を舞う。
「ああっ!」
「沙希っ」
 最初の一突きで沙希は我を忘れ、高みに上り詰めるまで園部の雄を貪欲に飲み込み、絡みつき、別の生き物のように園部を翻弄する。
「あんっ…!あっあっ…ふぁんっ…はうっ…!」
「くそっ…!」
 その激しさで園部もあまり持たないのだが、情けないと思った途端、射精感が引いていくのには苦笑うしかない。
 その敗北感を武器に、園部は沙希の腹の中をいっそう激しく犯す。
「あんっ…はるさんっ…いぃっ…!きもち…っ…はっ…はあっん…」
「沙希っ…」
 愛しい身体を折れそうなほど強く抱き締め、獣のような挿入を繰り返す。 沙希のよがり声と湯が激しく波打つ音、そして園部の荒々しい息遣いが浴室に響き渡る。
「もっ…いっちゃうっ…いっちゃう!あっ…あああぁっっ!」
 沙希の中が絶頂を伝えるように痙攣し、園部のペニスを締め付ける。この瞬間、園部は全てのプライドをかなぐり捨て、沙希が与えてくれる快楽に没頭するのだった。

「はるさん、昨日のユーカリさ、神社に奉納しないといけないんだけど…」
 アメリカに神社などあるのだろうか?
「さあな…神頼みなんかしたことないからな」
「どうしよう…」
「吉野に電話してみるか?」
「結局そうなるんだよね…」
 沙希は痛む腰をさすりながら、吉野専用携帯に手を伸ばしたのだった。



END


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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

NYはどうなのか知りませんが、ワシントンには椿大神社というのがあるのですって。きっと吉野さんが電話で教えてくれたでしょう。園部さん、たまには格好良く終わりたかったんですけどね、やっぱりこのパターンがぴったりです(笑)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

七夕の軌跡

園部と沙希

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