亮の日記
朝一番に巽さんがいらっしゃいました。巽さんもこの三日間、だんな様のお世話でお忙しかったようです。だんな様のお供で飲みに行ったりショーを観に行ったのでしょうか?
「ホテルの部屋の前で着替えを渡しただけ。招き入れてもくれなかったよ。まったく、そのうち亮に躾直してもらわないと」
おうちよりホテルが良いだなんて、僕たち何かやってしまったのでしょうか?
「いや、自分の方が後ろ暗くて帰れなかったんだよ」
何故でしょう…?
巽さんは今日一日、ゆっくりしていかれるそうです。巽さんは僕に勉強を教えるのだとはりきっていました。算数は…苦手です。国語は一緒に本を読みました。巽さんはフランス文学がお好きで、コクトーやラディゲを貸してくださいましたが、だんな様に取り上げられてしまいました。僕が読んではいけないのだそうです。お二人はご本の趣味が合わないようで、三島由紀夫も江戸川乱歩も没収されました。宮沢賢治は読んでも良いと言われたので、童話を一緒に読むことにしました。
巽さんは本を読むのがとても上手でした。
楽しくって煩く騒いだのがいけなかったのでしょうか、だんな様はお部屋に戻ってしまわれました。