亮の日記

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 今日は予行練習でフルーツのショートケーキを作りました。フルーツソースでお皿に模様を描く練習もしました。腕のふり方が難しいです。テレビの番組で飴細工を作る場面を観ましたが、あんな風に華麗に動かせたらいいのに…生クリームをスポンジに塗るのもけっこう難しいのです。力加減やクリームの量、台を回す速度も大切です。
 小さめの二段重ねケーキを作り、そのままお出しして目の前で取り分けて食べるか、最初から切ってお出しするか、まだ迷っています。今日中に決めてしまわないと、盛りつけが全く異なりますから…

 大きなデコレーションケーキを大胆に切り崩し、取り分けて食べるのも楽しいです。巽さんと彼女さんに、好きなように切り分けていただくのも楽しいかもしれませんね。板井さんが、結婚披露宴の時に新郎と新婦が二人でナイフを持ってケーキに切れ目を入れる儀式がある、と教えてくれました。初めての共同作業、と必ずナレーションが入るのですって。

 僕はショートケーキを見ると、昔のことを思い出して、ケーキに指を突っ込みたくなります…お行儀が悪いけれど…だんな様と過ごしたお誕生日でやったのですが、だんな様も一緒になって指を突っ込んでいましたっけ…
 お父様に、じっとしているように、と言われ、地下室のような所に置いてけぼりにされた日、もしあの時僕が見つかっていたらだんな様に会うことはできなかったでしょう。僕が赤ちゃんの時に会ったことがあるそうですが、僕は覚えていませんでしたから…
 一人で寂しいときもあったけれど、だんな様と過ごしたひと月は本家に連れ去られてからの僕が生き残るための最も大切な思い出でした。
 二人で生クリームだらけになりながら食べたショートケーキは、たぶんこれから先も僕の一番好きな食べ物でしょう。

 巽さんにも、そんな思い出を作っていただけたらなぁ…