亮の日記
月曜の朝、だんな様の会社では会議があるのですって。だから何が何でも失敗できません。僕は気を引き締めてだんな様のお世話をしました。
梅雨の晴れ間でお天気も良く、気分もすっきりしていましたので、自分ではきちんとお世話できたつもりです。
だんな様のお車が門を出て、見えなくなるまでが僕のお見送りのお仕事です。今日の会議には叔父も出るそうで、だんな様は朝からずっと厳しい顔をしていらっしゃいました。無事終わるようにお祈りします。
でも僕は、会議とか、会社でのお仕事にとても憧れています。お屋敷でも月に一度か二度、会議をしようかしら?細々した備品の在庫確認やお買い物、電気や水道の節約、お屋敷のメンテナンス、お家の中のことだけでも沢山考えることがあります。
僕はお屋敷の管理に必要な金銭の管理も任されています。月に二度、だんな様に家計簿をお見せして、現金は板井さんに預かってもらいます。お買い物に行くのは板井さんが一番多いので都合が良いのです。
少しでも節約できたらだんな様も喜んでくれるかな?だんな様のものは節約できませんが、僕の物や電気代ならもう少し節約できそうです。夜は時々ろうそくを使うのも良いかもしれません。とても可愛いろうそくが沢山ありますし、白いろうそくを溶かして色を付けたり、香水や精油を混ぜれば良い香りのろうそくが出来ます。
本家のお屋敷にいるときは電気など点けてもらえませんでしたから、何もない夜は、暗くなれば眠り、明るくなれば目を覚ます生活でした。これは、本当は良いことなのですって。あの頃はみんな恐い夢を見たり体調が悪かったりで暗い夜は嫌いだったけれど、今はとても幸せだし、ろうそくのほのかな明かりの中で過ごすのはロマンチックだと思います。
時々、巽さんと屋根裏で過ごすときもろうそくの明かりを使うのです。巽さんはとてもお優しいし、お話しも楽しいので、ろうそくの光りの中で聞き入ってしまいます。
自分のお部屋でも、一人で、ろうそくの明かりの中で色々考えるのも楽しいかも知れません。今度やってみよう。
幾らくらい電気代が安くなるのかも調べてみなくては。調べてから、みんなに報告するための会議を開こうと思います。