亮の日記

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 結局だんな様は秋一さんとの旅行を諦め、お屋敷でのんびりすることにされました。秋一さんは僕と一緒に毎日お料理をするのですって。大丈夫でしょうか…去年は遊びすぎてレポート提出の期限ギリギリになって大あわてしていましたっけ…今年は四年生なので就活もしていなくてはいけないのですが…だんな様に紹介して頂くのかな?恐くて聞けません。

 今日は少し涼しかったので、秋一さんとトレーニングをしました。時々ストレッチをするようになったので以前ほど身体は硬くありませんが、腹筋や腕立て伏せは二回で潰れてしまいます…慣れたらすぐ出来るようになるよと言われましたが、どうやって慣れれば良いのでしょう。秋一さんがそっと手を添えて下さって、やっと五回ほど腕立て伏せが出来ましたが、フライパンも握れないほど腕が笑うようになってしまい、今日の食事当番からは外されてしまいました。

 給仕するときも腕が震えてお皿が震えます。ティーカップもかちゃかちゃ言うし…巽さんに心配されてしまいました。でも、わけを話すと後からマッサージをしてあげるとおっしゃいました。
 マッサージなど、初めてです。
 今日のお仕事が済んで、お風呂に入って身体を温めてから巽さんの部屋へ行くことになりました。
 ちょっとドキドキします。だって、テレビで観たとき、患者さんがもの凄い悲鳴を上げていたことがあるので…ばきっ、とか、ぼきぼきっ、とかいってました…あんなことされるのかな、とお聞きすると、巽さんは撫でるような優しいマッサージだから怖がらないで、とおっしゃいました。

 恐る恐る巽さんのお部屋へ行くと、いつもとは違う香りがしました。リラックス効果のあるアロマキャンドルが灯してあります。

「じゃ、始めようかな?先ずはベッドに俯せになってごらん」

 とおっしゃったので、ごそごそ横になっているとノックの音が…
 秋一さんです。無理をさせたのは自分だからと、様子を見に来られたのですって。だんな様をほったらかして、またご機嫌が悪くならないでしょうか…心配していると、だんな様にはちゃんと許可を取ってきたから大丈夫とおっしゃいました。それを聞いて僕もほっとしました。

 巽さんのマッサージは、おっしゃったようにとても易しく丁寧で、それに秋一さんが面白いことを沢山話して笑わせてくれるものだから、すっかり身体の強張りも取れてしまいました。

 今夜はよく眠れそうです。お休みなさい。