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  本田は最近、セックスの始め方に疑問を抱くようになった。十分に煽られて欲情するのだが、なぜか笑いも入る。
 財布を忘れ、結局本田が飲み代を支払ったのだが、その少し前はかなり良いムードだったと思う。
 財布を忘れ、ふて腐れる克彦の機嫌を直すために抱き締めたり頭を撫でたりキスしたりで、少しだけムードが戻ったと思う。
 それなのに。
 部屋に戻り、そのまま克彦をベッドに連れ込んだ。覆いかぶさり、唇を貪りながら服を脱がせ、酒でピンク色に染まった胸元に赤い花びらを散らした。
 だが、スリムな豹柄のパンツに手を伸ばしたとき、克彦が跳ね起きた。
「タイムッ!!」
 仕方なく身体を離す。こういうときは、シャワーを浴びたいか、トイレに行きたいか、最近では下着を履き替えたいかのどれかである。
「今日さ、すごく集中して仕事を仕上げたんだ…集中するときにさ、今夜のことが気になって…ちゃんとゆきからもらったの、履いてたんだよ?でも、なんかこう…すーすーすーっていうか、気になっちゃって…履き替えたんだ…」
「…オムツでも履いたのか?」
 少し険悪な声になってしまった。
「いいじゃん!ちゃんと持ってきたから…履いてないとゆきが怒るから…履き替えるの。ちょっと待っててくれても良いじゃん…」
「いや…今日はそのままでいい…その代わり、両腕はここから、動かすな」 克彦の両腕を取って頭の上で交差させる。
「絶対に動かすな…分かったな?」
 

 豹柄のパンツの上から焦れったくなるほど指でなぞられる。この格好で小一時間全身を弄られ、克彦の性器は下着の中でびくびく震えていた。
「も…さわって…お願い…んっ」
 やっと豹柄のパンツを脱がしてもらえたが、そこには触ってもらえず、克彦は絶え間ない愛撫に腰をくねらす。克彦が感じるところは全て把握しており、そこを攻めながらも肝心の部分はほったらかしのままだ。下着には大きなシミが広がり、本田がからかうと、克彦は目に涙をためて哀願し始めた。
「ゆき、いじわるしないで…お願い…」
「言いつけを守らないからだ…」
「おねが…いきたいっ…もうっ…」
「まだ触っても無いのに?いやらしい身体だ…」 
 下着の中で張りつめた形の良い性器にそっと指を這わすと、体中が細かく震え、とうとう克彦は涙をこぼしてしまった。
「ゆきっ…!」
 このまま、体中への愛撫だけでいかせてみたい…そう思ったが、快感を求めて涙を流す克彦を見ることができただけでも良い。
 本田が下着に手を掛けると、克彦も腰を上げて加勢した。
「克彦、もっと、足を広げて…」
 いきり立った性器に息が掛かる距離で囁き、上目遣いに見上げる。頬を朱に染め、情欲に潤んだ瞳が本田に早く開放してくれと訴えかけていた。
「届かないぞ?腰をもっと突き出して」
 じれったさなのか、恥ずかしさなのか、首を横に振り腰をもぞもぞするだけだ。
「克彦?言うことを聞くのじゃなかったのか?」
 優しい声で訪ねると、少しだけ腰が浮いた。
「あぁっ…からだ…動かないんだ…お願いだから…ゆきっ」
 身体を支えられないくらい快感で下半身が重くなっているのか。
 せわしなく動く下腹を打つほどに勃ちあがった性器の竿を、舌先ですっと舐め上げる。
「んぁっ!あんっ…あっ…もっと…もっとしてっ…」
 溢れかえった蜜でぐちゃぐちゃになった性器を口に含むと、克彦の嬌声がますます激しくなる。
「はっ…はっぁっっ…はんっ…っ!も…でるっ…!」
 

 ぐちゅ…という音と共に、本田の雄が克彦の身体の中にゆっくりと入ってくる。本田の形を思い出させるように、ゆっくり…
 圧迫感と快感に、たとえようもない愛しさが重なって、桃源郷の扉を開く。何度抱き合ってもそこは変わることなく二人を迎え入れてくれるけれど、克彦はいつも少しだけ不安を感じる。でもそれもほんの一瞬で、本田が差し伸べてくれる力強い腕にすがって待っていれば、全ての不安がかき消されてしまう。
 快楽を処理するだけの行為が、こんなに自分を幸せにしてくれるとは思っても見なかった。本田には我が儘しか言わないのに。どうかこの人がずっと側にいてくれますように…神様なんて信じていないけれど、そう祈らずにはいられなかった。


 翌朝、心地よい重さと気怠さを腰に残しながら、本田と克彦は朝市に出掛けた。雑誌やテレビで観た事がある青い魚もいるし、ハリセンボンもいる。
「ゆき、これどうやって料理するか知ってる?」
「皮を剥いで内臓を出して、頭は付けたまま、みそ汁に放り込む。食べる部分は少ないが…話の種だ、買っておこう」
 赤マンボウやら黒カンパチやら真っ青のブダイやら、店が開けそうなくらい買い、捌いて真空パックにして本田の自宅まで届けてもらうことにした。
 沖縄名産の野菜やフルーツも仕入れ、二人でメニューを考える。
 ヤクザとその愛人とは思えない行動が、また二人の気持ちを盛り上げる。
「克彦、今日は今から無人島へ行くぞ。園部とチビも行ったらしいな。俺たちが行かなくてどうする」
 いつも以上に本田の方が乗り気だ。
 石垣島から船で一時間ほどの無人島に降り立つと、やはりそこでも先発隊の部下達がキャンプの準備を始めていた。
 意外とアウトドア派の本田は、キャンプの準備が終わるまで克彦を連れて島内を見て回ることにした。周囲は3キロほどで、散歩がてらの探索に丁度良い。が、何やら物騒な武器らしき物を腰に差し、肩からもぶら下げている。
「ゆき…それ、どうするの…」
 銃刀法には完全に違反している大型のサバイバルナイフにライフル。
「野ウサギが、いるらしい」
 

 総勢10人ほどの部下が、腹を空かして待っている。この一言に、克彦は黙り込むしかなかった。うさぎが可愛そうとか、うさぎの毛皮のコートを持っている身では言えない立場だが、目の前で撃って捌いた物を食べられるかどうか不安だ。
 がさっ…と音がするたびに、心の中で「うさぎさん逃げて!」と祈ってみる。本田は音を聞き分けられるのか、今のはなんの音、と説明して克彦を安心させる。そうやって10分ほど歩いた時、本田がふと立ち止まった。
 ゆっくりとライフルを構え、正面の繁みを見つめている。克彦も息を凝らしてじっと見つめるが、うさぎなど何処にも見えない。何やってるんだろう、と気を緩めた瞬間、ダーンッ…と慣れない大きな音に驚き尻餅をついてしまった。
「な、な、な、なにっ!」
「うさぎ。一羽仕留めた」
 地面にへばりついている克彦に手を差し伸べ、ゆっくりと引き起こす。
「ここで待ってろ」
 そう言うと、繁みへ向かって歩き、何かを拾い上げて帰ってきた。
 うさぎだ。脳天にぽっかりと穴が空いている。
「いたんだ…俺には分からなかった…」
「ああ。繁みの中でじっとしていたからな。輪郭と、毛皮の模様が少しだけ見えていた」
「うさぎ、獲っても良いの?」
「さあな。喰ってしまえばわからねぇ。何百匹といるからな。うさぎは繁殖力が強い。たぶん、定期的に駆除しているはずだ」
 そう言えば、世界中の色々な島で、人が持ち込んだうさぎに生態系を壊されているという話しを聞いたことがある。ここがそうなのか知らないけれど、殺してしまったからには有り難く食べるしかない。
「あと二羽、手伝え」
 と言うことは、あと二回、本田の勇姿を観られるわけだ。耳を澄まし、目をこらし、ライフルを構える姿は、都会で悠然と立っている本田とは違う魅力があった。

 全部で3羽仕留めた後、浜辺に降りて砂浜をたどってキャンプに戻ることにした。あと少しで砂浜、と言うときに、本田が克彦を抱き寄せて立ち止まった。
「どうしたの?」
 本田の視線を追うと、繁みの中に、子供が立っていて…その隣にはインコがいた。小桜一家の照屋だった。

 
「本田さん、あんた東京の黒瀬組の組長なんだってな」
 ライフルを突きつけられ、膝をガクガクさせながら照屋が話しかけた。克彦は照屋が連れていた子供に微笑みながら近づき照屋から奪い取ると、本田の後方へ下がった。何が起こっても見えないように、子供を抱き締める。
「大丈夫だからね。お兄ちゃんとじっとしてようね」
 小声で話しかけると、こくんと頷いた。
「昨日は…悪かったな。いや、すまなかった。それに助かった。あんたのお陰で組からは逃げられそうだ。でな、あんたに頼みがあって追いかけてきた」
 追いかけてきたとは上出来である。一応警戒はしていたはずだが。
「…」
「あの、今あんたの連れが抱いてる子供、俺の子なんだ」
 克彦がびっくりして子供を見つめる。どこをどうしたらあのオヤジからこんな子供が産まれるんだろう。いや、産むのは母親だが。それくらい、可愛い子だった。
「そいつの母親は内地の人間で、爺さんと婆さんが東京に住んでる。母親はどこにいるかわからねぇ。でな、爺さんと婆さんの所にその子を届けてもらえないか?」
「…」
「金は、払う。そいつ、圭太郎て言うんだがな、圭太郎の名前で通帳を作ってあって、今その子に持たせてる。背中のリュックに入ってる。それ使ってくれ。頼む。うちの連中は誰も信用できねぇんだ…」
「お前の息子がどうなろうと、俺には、黒瀬には関係ないんだが…」
「ゆき、そんなこと言わないで!」
 叫んだのは克彦だった。
「こんなに可愛い子、一人にしたらどんな目に合わされるか…連れて行くくらい簡単だろ?」
 本田はライフルを構えたまま、後ろを振り返らずに言った。
「…だ、そうだ。克彦の望みは全て叶えると誓った。お前のためではない。で、お前はどうする?」
「俺は…ここに警察を呼んだ。あと一時間くらいで来るはずだ」
 捕まって、取りあえず安全な場所、塀の中に入る気らしい。


「冗談じゃねぇ…」
 本田は克彦の腕を取ると急いでキャンプまで引き返した。
「このインコ野郎が警察を呼んだそうだ。やばい物は全て隠せ」
 やばい物と言っても本田の武器くらいだったが、克彦以外の人間はすべてやばいといえばやばい。ラフな格好の者もいるが、黒服の者もいる。この無人島でスーツを着て過ごすなどあり得ない。スーツ組は一旦遠回りで石垣島へ戻り、照屋が連行されたのを確認してから再び戻ることにした。
「お前は島のどっかに隠れてろ。見つかりやすい場所にな」
 そう言って照屋とはここで会わなかったことにして、できるだけ警察と係わらないようにしたい。
 問題は、一人だけいる子供だ。不自然すぎる。
「大丈夫、俺に任せて!」
 慌ただしい中、克彦だけが圭太郎と二人で砂浜で遊んでいた。
「圭太郎は今からこのおじちゃんの子供になるんだよ。で、俺はこのおじちゃんの会社の人だからね〜?」
 圭太郎はこくんとうなずき、そのおじちゃんの手を握った。
 本田の全身に戦慄が走ったのは、急に子持ちになって子供に懐かれたからか、おじちゃん呼ばわりされたからか、どちらだったのだろう。
「圭太郎はいくつかなー?」
「…13だよ」
 克彦が固まった。どうみても10才以下だ。
「…もっとちっちゃく見える?でもほんと。中学の学生証もあるよ」
 バッグの中から取りだした手帳を見ると…
「マジ?なんで…もっと可愛くなっちゃったよ、どうしよう、ゆき、この子めっちゃかわいいよ。俺の子供にしても良いくらい」
「…そうか、じゃあ本当の子供を作ろうな」
 

 照屋が言ったとおり、一時間後に警察が現れ、最悪なことに退去命令が出てしまった。照屋がこの島のどこかに麻薬を隠しているかも知れないので、捜索をするためだ。
 ここで我を張り警察に目を付けられても困る。代表者の連絡先を書かされたので、照会された場合、黒瀬組であることがバレて痛くもない腹を探られるかもしれない。誠仁会では麻薬は御法度なので、照屋との関係を疑われれば組織の中でもきわどい立場に立たされる。
 仕方なくその命令に従うことにしたが、克彦が思った以上にご機嫌なので今回は潔く諦めることにするか、と本田は思った。
 沙希の時もそうだったが、小さくて可愛い男の子にはどうやら目がないようである。世話好きと悪戯小僧の血が騒ぐのか?子供の目線にしゃがんで戯れる克彦の表情をじっと見ていると、くるくる変わる明るい感情が滲み出てきて、本田は惹き付けられてしまう。
 照屋の子供、圭太郎はとても行儀が良く、良くあの父親でここまで育ったと思う。聞けば、両親は結婚しておらず圭太郎は祖父母の籍に入っているそうである。父親の職業は知っているが、その世界からは隔離された鹿児島の有名私立校に通っていて、今日の朝一で帰ってくるように言われたのだそうだ。母方に似たのか見た目も中身も優秀で、照屋もあれで子煩悩だったらしい。
「お父さんがあんなに仰々しく連行されていって、圭太郎は恐くなかった?」
「全然。お父さんは悪いことしかできないけど、僕はまっとうに生きろって。それができるように頑張ってれば、恐い物なんか無くなるって。僕、頑張ってるから。お父さんも何年かしたら帰ってくるし」
 それはそうだが、沖縄では生きていかれないだろう。これから一生、圭太郎に迷惑を掛けまくって生きていくのかも知れない。 
「すごいなー、圭太郎はしっかりしてるなー…」
 
 無人島に一泊ができなくなったので、夜はまた昨夜の店に行った。照屋のことは知れていた様子で、ママがとんだ災難にあってしまった克彦たちに、普段は出していない家庭料理をご馳走してくれることになった。
「俺も手伝う!東京に帰ったらみんなに食べさせて上げたいから、習っちゃおうっと」
 少し早めに出て、バーベキューのために買っておいた材料を提供する。お店の厨房は狭すぎるのでママの自宅に上がり込み、本田と3人で台所に立った。
「あらまぁ、いい男が二人…料理もできるなんて、すごいわぁ…」
 ママの指図で魚を捌き、下ごしらえを手伝ったら、後は大鍋に放り込んで豪快に調味料を放り込んでいく。繊細な手仕事は、実は本田の領域で、刺身のお造りは最早芸術品のような盛りつけだった。本田が撃ってきたうさぎはベランダで炭焼きにし、もうもうと上がる煙のため、近所に事情を説明するため電話を掛けまくるしまつだった。
「どれも急所を一発ね。これは照屋も謝っておいて正解だったわね。いくら命があっても足りないわ。克彦ちゃん、あんた最高の男見つけたわね〜…ママ羨ましい」
 褒められて、克彦はえへへ、と照れ笑いをした。本当の事の中でも、一番嬉しいこと。
「ところで、圭太郎の新しいおうちは大丈夫なの?意地悪婆さんだったら目も当てられないわ。せっかく才能のある子なんだから…いい人達だと良いんだけど…」
「それも今、ゆきが調べてくれてる。本部長の吉野さんって、すっごく格好良くて黒瀬組の夜叉とか死に神とか言われてるんだ。その人が凄く優秀でね、なんでもあっという間に調べてくれるの」
「黒瀬組の夜叉?」
「あ」
 もうばれてると思うけれど、ママにはまだ本田の職業がヤクザだとは言っていない。
「うん。夜叉って、あの夜叉。辞書に書いてある夜叉。それで…」
 ちらっと本田を見上げると、ごく普通の表情だ。
「ヤクザ?」
 ママが聞いてきた。
「えへへ…そうなの」
 今度のえへへは誤魔化しのえへへ。
「まあね、克彦ちゃんと二人だけだったら社長と恋人だけど、周りの人達の雰囲気がねぇ…でも、沖縄ヤクザと違って、都会のヤクザは格好いいわぁ。取り巻きも躾が良いし、一人置いていって欲しいくらいだわね」
「だって!ゆき、ちゃんと聞いてた!?」
 あのほら、お腹殴られてもびくともしなかった人とか?鍛えてるんでしょうね…うん、黒瀬は空手と柔道が入社試験にあるんだ…入るのに試験があるの!?…うん。それにゆきと吉野さんと沼田さんはめちゃ高学歴なんだよ…
 二人でかしましく喋り倒す声をBGMに、本田は苦笑いながら包丁をふるい続けていた。


「圭太郎の祖父母はごく普通のサラリーマンだそうだ。そこそこの資産家で近所の評判も悪くない」
 宴会の途中で吉野から連絡が入り、本田は真っ先に克彦に知らせた。
「圭太郎のお母さんは?」
「これが跳ねっ返りで…今は世界一周旅行に行ってる…」
「なんでまた…」
「さあな。資金を貯めている途中で照屋に会って、圭太郎が出来たようだな。まあそのうち毛色の違う兄弟でも連れて帰ってくるだろう」
 なんだか会ってみたい気もするが、これだけ可愛い子供が産まれてるのだから、相当な美人と推測される。跳ねっ返りの美人…
「なんか、俺と似てる?」
「…だな」
「良かった〜〜…俺の方が先にゆきに出会ってて」
 圭太郎が蝶かトラに変身する様はみたいけど、母親には近づかないでおこう。もし万が一、本田の目に入ったら…
「そろそろお開きにするか…」
 また何か良からぬ事を考えて暗くなった克彦を、生き返らせなければならない。無人島で一晩中愛する予定だったのが、下界で悲しませてどうする。
 本田は克彦を立たせ、石垣島最後の夜を二人きりで過ごすべく、店を後にした。


「ゆき、圭太郎は?」
「都筑の部屋だ。気になるか?」
「だって、なんだかんだ言って、お父さんが目の前で逮捕されちゃったんだよ?傷ついてないわけ無いよ…」
「…子供が好きか?」
「うん」
 圭太郎が気になるとは言え、本田に甘える事も止められない。
「じゃあ…子作りがんばろうか…」
 広い部屋なのに、いつもピッタリ寄り添って座るので空いたスペースが勿体ない。それなのにもっとくっつきたくなって、克彦は本田の胸に頬を寄せた。
「ゆき、子供欲しい?」
「お前との子なら、欲しい」
 つむじに優しい声とキスが降りてきた。
「産めなくて、ごめんね…男で、ごめん」
「また…何を言い出すのかと思ったら…」
 本田はそれ以上何も言えなくなるように、克彦の唇を塞いだ。もちろん、自分の唇で。
「お前に与えてやれないものがあるなら、それは俺の責任だ。責めるなら俺を責めろ…自分を責めるな」
 克彦がくすん、と鼻を一つすすった。
「…責めても良いの?」
 だって昨日はさんざん虐められたし、だいたいいつもえっちの時は俺に我慢ばっかりさせて、たまには俺の言うことも聞いてもらうからね、これでもゆきより男のことは良く知ってるんだから、ゆきが我慢できなくてお願いするまで攻めまくって、それで俺は好きなだけ好きなときに逝かせてもらいます!
 …と、途端に元気になり果敢に攻める克彦だったが、結局本田を翻弄することは出来ず、逆に良いように弄ばれたのだった。


「圭太郎、お祖父ちゃんとおばあちゃんの言うこと良く聞いて、ちゃんとした大人になれよ?」
 日曜日、予定より早めに東京へ帰り着いた克彦は圭太郎を祖父母の家に送っていった。
「大丈夫だよ。僕、大人になったらろくでなしのお父さんの面倒見なくちゃいけないし、立派になってないとね」
 祖父母の自宅は新興住宅地にあり、なかなか小綺麗な様子だった。石垣島からわざわざ連れてきてもらったからと家に上げてもらったが、家の中には世界各国の民芸品が所狭しと並べてあった。聞けば、圭太郎の母親が行く先々で買い求めた物を送ってくるのだそうだ。そうして自分は身軽に旅行を続け、両親には無事を伝える。
 照屋とのことはあまり詳しく聞いていないそうだが、そんな娘の両親はどこか突き抜けたところがあり、どんな事情で出来た子供であれ可愛いと、圭太郎を喜んで迎え入れてくれた。
 世の中捨てたものじゃないな、と感心していると…
「梨世(りせ)の子供が来たって!?」
 と言いながら乱暴にドアを開けて入ってきたのは…
「ごーくん!?」
 だった。

 克彦の同僚、岩城剛。
 お隣さんがごーくんの実家で、圭太郎のお母さんの梨世さんはごーくんの憧れのお姉さんだった。どうも、ごーくんの女の趣味は梨世さんの豪快さがベースになっているらしい。憧れのお姉さんが旅先でこしらえた子供が帰ってくると言うので、彼女も彼もいなくてヒマなごーくんはわざわざ見物に来たのだ。
 ごーくんは小柄で可愛いが漢なバイセクシャルだ。梨世さんのような大柄で恐そうで豪快な女性に押し倒されたいタイプで、自分より小柄で可愛くて守って上げたくなるような男を押し倒したいタイプだ。
 圭太郎をじっと見つめるごーくんの明るい未来を、克彦は祈らずにはいられない。

 

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66666ヒット記念です。お陰様でダミアンきり番をむかえることができました。いつも応援してくださってありがとうございます。克彦でリクエストを頂きましたが、いかがでしたか?雪柾が克彦に命令していた「腕を動かすな」の空気手錠、これをやらせてみたくって…(笑)本当はもっと痛いことをするときに愛情の証として使うSMの技?のようです。でもこの二人にはさせられませんでした…意気地無しです(笑)

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後編
黒瀬組シリーズ

雪柾と克彦

Go!石垣Go!