花・ひらく

園部と沙希

 両足を持ち上げられ、身体をくの字に曲げられた態勢で、沙希は自分でも見たことがない秘所を園部の目の前に晒していた。どちらの体液か分からないものでびっしょりと濡れそぼったそこを執拗に舐められ、沙希はもう声すら出せない。
 それに…園部に抱き締めて欲しかった。
 身体が離れていると、一人で放り出されたように寂しい…
「そのべさ…」
 失神寸前の悦楽の中で園部の名を呼ぶ。
 とうとうと涙を流しながら身体を震わすしかできなくなった沙希の様子に気付いた園部は、ぐったりした沙希をあやすように抱き締めた。
「どうした?きつすぎたか…」
 沙希は微かに首を横に振り、園部の温もりの中に潜り込む。
「抱き締めててほしかったの…」
 こうしていて貰うと、あんなに嫌だと言った行為の数々をすんなり受け入れることができるような気がする。
「いくらでも抱き締めてやる…」
「ん…」
 まるで子犬のように鼻を鳴らし、園部の首筋に顔を埋めてくる。優しい愛撫が好きなのか、耳元を指先でまさぐると身体をすり寄せてくる。
「あ…ん」
 濡れそぼった性器が園部の腹に密着する。
 沙希の背中に回した手で柔らかく背中をさすり、少しずつその手を下げていくと、園部の手の動きに合わせて沙希の身体が波打つようにうごめくのが見えた。
「沙希、お前の身体は小さいのに、熱いな…」
「ん…」 
 強烈な快感にはまだ慣れないが、こうやって、全身を撫でられるのは心地よくて好きだ。
 沙希は園部の手の動きにうっとりと身を任せていたが…


 園部は少しばかり残った罪悪感を吹っ切るように、沙希の秘めた部分に手を這わせた。ふっくらと少年らしい尻が園部の手にすっぽりと覆われ、滅多に外気に触れることがないそこを押し開くように揉みしだく。
「んぁっ…」
 股間深くに手を差し込むと、性器から溢れる雫でたっぷりと潤っており、ぬめるものを指先に絡め、固く閉じた蕾にゆるゆると塗り込む。
「や…」
 下半身のありとあらゆる所を弄られ、それが愛情の証だとしても、沙希にとっては羞恥と驚愕の連続だ。自分でだって、園部がしているように執拗に触ったことはない。
 何をされるのか克彦から聞かされたけど、その時はただ恥ずかしくて分かった振りをしていた。お尻がどうのと言っていたような気がするが、まさか指先が潜り込んで来そうな力で触られるなんて思ってもみなかった。
 お尻にぎゅっと力を込めて園部の手を阻止しようとするが、お構いなしでますます横暴にこじ開けようとする。
「いやっ…だ…やめて…!」
 嫌と言って止めてくれたことはないが、それでも抵抗しなければずるずると流されそうだった。
「おねがいっ…そんなとこ、や…ああっ…!」
 つぷっ…と身体の何処かで音がしたような気がする…と同時に園部の指が奥深くまでねじ込まれた。
「沙希、力抜け…もっと気持ちよくしてやるだけだ…」


 

 潤いは少々足りなかったが、第一関節くらいまでなら入りそうだ…などと至極冷静に沙希を責めながら、いつもヘッドレストとマットの間に隠しておくように言いつけてある潤滑剤を取り出す。ベッドも新調していたのでそこにあるかどうか疑問だったが、無ければ後で部下を殴り倒せばいい。今はそんな下らないことより腕の中の沙希を、もっと、愉悦の声で鳴かせたい。
 いやいやと身を捩る沙希を適当に押さえつけ、沙希の両足の間に太ももを割り入れる。十分ではないが、少しは沙希の足が開く。そこにたっぷりと潤滑剤を垂らし、何事かと目を見開く沙希の唇に食らいつく。
「んっ!んっ!」
 ぬめりに助けられ、園部の指が一気に奥まで突き立てられる。
 沙希の口から漏れた悲鳴のような声は園部の口中に吸い取られ、獣じみた口づけが沙希を襲う。
「くふぁっ…んっ…んんっ!」
「沙希、力を抜いて、ゆびの動きを感じろ…」
 ぐちゅ…と卑猥な音と共に抜き差しされる指…入り口をこじ開けるかのようにひっぱり、痛みが襲う間際に抜く。
「ひ…っくぅっ…うんんっ…」
「沙希、恐くないから…」
 内壁を指の腹で柔らかく擦られると、時々ざわっと背筋が波打つ。
「男はここで感じるんだぜ…さっき気持ちよすぎてたっぷり出しちまったろう?あれよりもっと、良くなる…」
 もっと良くなる…その言葉で沙希は失神しそうだった。さっきだって…嫌だと言いながら…気が遠くなりそうなほど気持ちよかったのだ。
「こわい…よ…」
「恐かねぇ…俺に任せてれば良い。もっと中を擦って…いかせてやる」

 一本だった指が二本に増やされ、身体の中を激しく暴れ回る。時折指が触れて身体が痺れる場所があり、園部は気が付いているのかいないのか、そこだけは優しくゆっくり擦ってくれる。いつしかそれを待つようになり、沙希は無意識のうちに腰を動かし、その場所に園部を誘導する。
「あっ…あっ!あぁっ…あっ」
 頬を紅潮させ、我を忘れてしまった沙希の身体の中が園部の指に絡みついてくる。良いところを刺激すると、入り口がきゅっとすぼまり、園部をもっと深くへ導こうとする…
「沙希…気持ちいいのか?ん?」
「んんっ…!はんっ…ん…」
「言ってみろ…ここか?」
 良いところをつん、と押され、沙希はただ必死で首を縦に振るしかできなかった。園部の首に縋り付き、どうしようもないくらい高ぶった下半身を園部の腹に擦りつける。
 園部は小刻みに震える淫靡な唇をぺろっと舐めると、あられもない声を上げて腰を押しつけてくる沙希に目を細め、張りつめた己自身を解放するために、ズボンの前をくつろげた。


「や…ぁ」
「分かってる…ちょっと待ってろ。直ぐに楽にしてやる」
 せっかく忘我の悦楽に恥ずかしさを葬り去れたというのに、指を抜かれて放り出され、楽になるどころか気が狂いそうだ。
 それに、楽にしてやると言ったのに、大嘘で、沙希を襲ったのは張り裂けそうな痛みと圧迫感だった。
「うっ…ああぁぁっ!!やあぁっー!!」
 

 初めて受け入れるには大きすぎる園部のペニスは、痛みに耐えかねて閉じてしまった沙希の後孔の入り口で止まった。痛みと驚きですくみ上がった沙希の身体が園部の雄を噛みちぎらんばかりの力で締め付けている。
「くっ…!」
 無理矢理突き入れるか、引き抜くか、一瞬迷う。沙希は抜いて、抜いてと泣き叫び、園部の肩を掴んで押し返そうとしている。
「沙希っ…!力抜け…でないと、抜けない」
「ああぁっ…あっ…むり…っ!」
「落ち着け…」
 すっかり萎えてしまった沙希の愛らしい性器を手の中におさめ、雫を溢れさせていた先端を指でゆっくり弄る。
「ふぁ…っ!」
 わななく唇をそっとついばみ、舌でなぞり、軽く開いた隙から舌を割り込ませて沙希の口内を愛撫する。
 そうするうちに最初の痛みが引いたのか、強張っていた身体から力が抜け、萎えていた性器も可愛らしい鎌首をもたげ始める。
「んんっ…あん…ん」
「そうだ…落ち着いたか?ここがまた元気になってきた…」
 付け根から先端まで、じっとりと指で撫で上げると、また吐息のような声をもらす。
「深呼吸をするか?二回くらい、ゆっくりな。大きく吸って出来るだけゆっくり長くはけよ。落ち着いたら、今日はもうこれで終わりだ…キスして、ここを優しく弄ってやる…」
 涙に濡れた瞳をのぞき込みながら、安心させるような低い声で、耳元に囁く。
「ゆっくり吸って…そうだ、沢山吸えよ。で、ゆっくりはく……」
 汗に濡れた額を撫でながら、沙希が2回目に息を吐き始めた瞬間、園部は熱い楔を奥まで一気に打ち込んだ。


「うそつき…うそ…」
「嘘なんかついてねぇぜ…俺に任せろって言っただろう」
 叫ぶ隙もなかった。巨大な熱い固まりの突き上げに口から内臓が飛び出しそうな衝撃をうけ、気を失ってしまったのだ。短い時間だったようだが、気が付いたときには身体の中は園部の高ぶりに完全に占領されていて、ただ呆然と園部を見るしかなかった。
「分かるか沙希?俺が、お前の中にいる。これもお前のもんだ」
 軽く揺すると沙希の身体にぴりっとした痛みが走る。
「いたっ…!」
「最初だけだ。すぐに良くなる」
 沙希が目に涙をためて、頬を染める。
「腹の中を弄られて、気持ちよかっただろ?」
 否定したくても、ゆっくり動き始めた園部に口を塞がれてしまった。
 じんじんと痺れていた中に時々あの感覚が蘇る。
「ここ…だろ?気が狂うほど愛してやる。お前を狂わせるのは俺だけだ。俺の前でだけ狂って良いんだぜ」
 園部の巧みな動きは沙希の快楽のツボを確実に捕らえ、容赦なく愉悦の中に引きずり込んでいく。次第に深くなる突き上げと身体が打ち合う音に扇情され、沙希はあられもない声を出しながら欲望をはきだした。

「沙希?どこだー?」
 遠くで園部の声がする。
 昨夜の今朝、目が覚めて正気に戻った瞬間に沙希はベッドから転げ出て知らない家の中を這い回っていた。知らない外人が何人かあたふたと沙希を見守っていたが、どうしようか考えあぐねているようだ。
 沙希は近くにあった階段から、手すりに縋り付くように階下へ降り、目の前にあったガラス戸を開けて外に出た。
 どこをどう見てもアメリカっぽくて、沙希の知っている町並みとはほど遠い。
(もう帰る。絶対日本に帰ってやる)
 そう思ったものの、来るときも吉野に任せっきりだったので、帰る方法なんて知らなかった。
(あんなこと…!)
 されたことよりも、よがり狂った自分が信じられない。
 それに、園部はすごく意地悪だった。
 園部のことは大好きだが、あんなこと…自分が変わってしまいそうで、恐くてたまらない…
 庭の植え込みの影に隠れるように座り、どうすればいいのかじっと考える。

(兄ちゃん…会いたいよ…)

「沙希…なにやってんだ?」
 園部が近づいてきたことにも気が付かないくらい考え込んでいたようだ。
「…!」
 だらしないガウン姿で、はだけた肩から胸に掛けて龍のかぎ爪の刺青がちらちらと覗いている。
 朝からなんでこんなに格好いいんだろう…
 俺なんか…髪はあらぬ方向に跳ね返り、ガウンはぶかぶか、パジャマは着ていたけど、そこから覗く身体ははっきりいって貧弱だ。
 それに、園部はあんなに余裕があったのに、自分はワケが分からないくらい翻弄されて叫びっぱなしだった。
「沙希?身体、大丈夫か?這い回って、どっか擦り剥いてないか?」
 情けなさ過ぎる…
「…うっ…うぅ…」

 園部が優しい顔で両手を伸ばしてきた。
 思わず手を伸ばしたのは、絶対に条件反射だ。園部の龍のかぎ爪にわしづかみにされても良いとか、ちらっとでも思ったのは幻想だ。
 でも…そこはかとなく恥ずかしいけれど、園部の腕の中は心地よくて最も安心できる場所でもある。
「どうした?」
「おれ…おかしくなった…」
 園部はふっと笑うと、沙希に口づけた。
「もっとなっても良いぞ。どんなになっても沙希は一生俺のもんだ。昨日みたいに狂っちまうのは大歓迎だ」
 思い出して全身がカッと熱くなる。
「な…なななに言って…!」
「お前、可愛すぎだ…もう一回食われたいのか?それとも朝飯食うか?」
 そう言えば昨夜は食事もせずに…眠る前に園部に口移しで水を飲ませて貰っただけだった。
 急におなかが空いたのと、もう一度あんな事をされるのは嫌なのとで、
「ごはん」
 と答えてしまった。

 さっきは帰りたいと思ったのに、園部を前にすると一時も離れたくないと思う。
 今日は園部の卵の食べ方を真似しよう。そして買い物に連れて行って貰って、晩ご飯を作って上げよう。護衛の人達はみんな外人だけど、日本食食べれるかな?克彦さんにレシピと作り方を教えて貰って…
「あ!」
 克彦さんで思い出してしまった。克彦さんがくれたあの目を背けたくなるようなお餞別…
「どうしよう…どうしよう…」
 急に慌て始めた沙希の顔を、園部が心配そうにのぞき込む。
「どうした、急に…」
「俺、あれ使わなかった…あれ使わないと病気になって大変なことになるって…」
「あ?何の話だ?」
「…コ、コン…ドー…」
 最後まで言えずに口ごもり、俯いてしまった…
 園部は直ぐに察しが付いたが、とぼけて、あわよくば朝から沙希に悪戯してやろうと思った。
「何のことだ?病気?そりゃ大変だ…薬か何かあるのか?」
「昨日持ってた巾着の中に…」
 そうか、もしかしてあのシロップみたいなのは桃味の薬…?


 沙希が本当のことを知ったのはそれから五分後のことで、十分後にはやはり日本に帰ろうと思ったのだった…

END.

最後まで読んで頂いてありがとうございました。沙希ちゃん楽しく暮らせそうですね。志貴兄と園部は似たもの同士なので、これからも大変そうですが(笑)一応本編はこれにて終了ですが、日本組と沙希ちゃんのその後がちょっとだけあります…

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