ひんやり冷たい寝室のベッドに潜り込みいじけていると、誰かが勝手に部屋の鍵を開ける気配がする。
 ここの鍵を持っているのは義童だけ。さすが付き合いが長いだけある、気になって来てくれたんだ、と思い、泣きはらした目元をごしごし擦りながらベッドの上に起きあがる。
 が、入ってきたのは本田だった。
「本田さん…」
「一人で泣くな、そう言っただろ?」

「なんで…どうして…鍵…」
 抱き締められて、キスされて、萎えそうになる気持ちをむち打ち必死で抵抗しながら訊ねる。
「酔いつぶしたときに…」
 かぷっ…と耳たぶを甘噛みされながらの囁きで背筋に快感が這う。
「あ…ん」
 今日一日、あんなに色々考えていたことがどうでも良くなるくらい、気持ちいい。背中に回された本田の腕がゆっくり官能的に這う。温かく包み込むような動きが心地よくて、克彦は本田の胸に縋り付くように顔を埋めた。
「どして…牛島のこと…」
「…酔いつぶしたときに…携帯とこの部屋に盗聴器を仕掛けた…」
(な…!)
 克彦はがばっと本田から離れようとしたが、がっしり抱き締められていて、絡みついている本田の腕はびくともしない。精一杯胸元を突っ張っても仔猫がじゃれているようにしか思えないだろう。

「そんな酷いこと!やりすぎじゃないかっ!」
 プライベートを覗かれた怒りと羞恥心で真っ赤になった克彦を見下ろしながら、本田はちっとも悪びれた風には見えず、むしろ意地悪そうに微笑んでいる。
「携帯に出たときのお前の様子がおかしかった。悪事に対する感が良いからな、俺たちは」
「俺たち?」
「俺と、吉野と沼田」
「じゃあ…牛島とのこと…」
「あれを聴いたのは俺だけだ…」
(あんな事を聴かれたなんて……っ!)
「ひどい!ひどいっ!あんな…っ…はずかしぃっ…!」
 本田の分厚い胸を拳で何度も殴る。殴っても殴っても本田にはなんのダメージもなく、全てを軽く受け止めてしまう。そのうち克彦の腕の方が痺れて、だんだん殴る力も弱まってしまった。
 本田は克彦の腰をすくうように抱き寄せ、背中を支えながらゆっくりベッドに押し倒すと、怒りで興奮し荒い息を吐く桜色の唇にそっと自分のそれを押し当てた。軽くついばむようなキス。
「なんで…俺なんか…」
「克彦。俺はお前が好きだ。お前は?」
 3日後に迎えに来ると言われて待っている間、嫌と言うほど自分の気持ちが分かってしまった。
「…好き」
「お互いに好きで、これ以上何が必要なんだ?」

 

 我が儘な女王様だけど可愛い時もあるし、なにより綺麗だし、付き合う相手には不自由しない。でも、浮気性。浮気さえしなければ、と言われ振られ続けた最低の男運。好きで浮気をしていたわけではないけれども、脅されてめそめそするより我が儘女王と言われる方がマシ。牛島だって年に何回か現れるだけなのでギリギリ我慢できる。適当に鎖で繋ぐ牛島の狡賢さには反吐が出るが、全人生をめちゃくちゃにされるよりは良い。ちょっとがまんして大人しくしていれば何も起こらなかったし、年をとって見た目が衰えれば飽きられるだろうし。
 このまま女王様人生を突っ走って、年老いたら落ち着いて付き合えるじいさんでも捕まえて隠居して、昔はあんなだったのに、とか笑いながら昔話でもすればいい。 嫌いなヤツと付き合ったことは無いのでエッチだって心が無かったわけじゃない。不感症ではなく、どちらかというと敏感な方なので沢山気持ちいい目にもあった。 捨てたもんじゃ無いと思う、この人生。
 たった一人の誰かが見つかるよ、と義童は言ったけど、今この目の前にいる人じゃないかも知れない。もっといい人が現れるかも知れない。見た目は最高に格好良くて、優しくて、思いやりが深くて、今までで一番好きかもしれないけど、もっともっと好きな人が現れるかもしれない。この人は単なるきっかけで、牛島とか他の嫌な思い出を取り去ってくれる役割の人で、これをきっかけに水口克彦のバラ色人生が始まるのかも知れない。始まったらもっともっともっと素敵な人が現れてあっという間に恋に落ちるんだ。
 

 だから…
 

 それ以上見るな…近づくな…熱い言葉を囁くな…スローモーションのように近づいてくる精悍な顔。
「心も体も、俺に明け渡せ」
 唇が触れるか触れないかの至近距離で囁かれる。このまま触れ合ってしまえば後は流されるだけ。
 しかし、いつまで待ってもそれは与えて貰えなかった。至近距離でじっと見つめられたまま緊張感と鼓動が高まっていく中で、本田が克彦のシャツのボタンに手をかけた。殊更とゆっくり、胸元が開かれて行く。白く、磁器のようにきめ細かな肌に本田の熱い手が触れ、胸の飾りを弄ぶ。
「ぁ…んっ」
 この人が欲しい。その熱で溶けてしまいたい…
 快感に敏感な克彦の本能が、早く全てを捧げてしまえと囁く。
「ほんだ…さ…」
 名を呼ぶと、言葉のかわりに指先で乳首を転がすように愛撫された。ぴくんと身体が跳ねた拍子に、鼻と鼻がぶつかる。もう少しで唇に触れて貰えるのに…それだけで意識が遠のくような深い口づけ。昨夜は体中が熱く燃え上がって、身体の中心が立ち上がるほど感じてしまった。あの口づけが欲しいのに…額も鼻も頬も、肌を合わせてくれるのに、唇にだけふれてくれないのがもどかしく、克彦は本田の首に腕を絡めて引き寄せ、自ら口づけていった。
 

 本田の下唇にそっと噛みつき、熱く濡れた舌で口の中を責め立てて欲しい、とばかりに誘う。舌で唇を割り、そっと口の中に潜り込み、本田の舌を探る。意地悪をするように逃げ回る本田の舌をやっとの事で捉えると、まるで褒美をくれるように克彦をきつく抱き寄せ、待ち望んだ獣のような口づけを与えてくれた。
「んんっぅ…」
 角度を変え、深く浅く、余すところ無く口腔を貪りあい、こぼれ落ちる唾液を啜り、舌を吸いあう。そのうちに、口の中の気持ちいいところを探り当てたのか、そこを攻めあげられた克彦の性器は痛いほどに張りつめて行く。
「どうした…もう音を上げそうになってるぞ」
 からかう台詞を吐きながらも、その目は優しい。早くどうにかして欲しくて、克彦は縋り付く腕に力を込めた。背中に回っていた本田の手がスラックスの前を開けると、下着ごとずり下ろす。細く柔らかそうな下生えを濡らすほど克彦のそこは雫を垂らし、本田の愛撫を渇望していた。
 しっとりと重い双珠を大きな手で優しく包み込むように揉みしだくと、先端からとろとろと蜜が零れる。
「ああっ…!…んっあっ…!」
 たっぷりと潤った形の良い性器を付け根から先端に向かってゆっくり、だが絞るように扱きあげる。じれったいようで快感を煽る手の動きに、克彦の腰が震えはじめ、小さな嗚咽がひっきりなしに発せられる。指先で裏筋を刺激し、同時に鈴口をねっとりと弄る。
「っ!…やッ…ああぁっ…!もうっ…」
 細く長く叫ぶような嬌声と共に、克彦はあっというまに射精してしまった。

「…我慢の足りない女王様だ…」
 吐き散らした精液を手ですくいながら、軽く口づける「だって…」
 自分でもまさかこのくらいで…と恥ずかしくなった克彦はそっと本田の胸元に顔を埋める。まるで初心な少年のような反応をする心と体に、自分でもどうしていいのか分からない。
「感じるままに…」
 耳元で低く甘く囁くと、本田は克彦の足を割り指で掬った克彦の蜜を後ろのすぼみに塗り込める。
「はぁっ……」
 先ほどまで俯いていた克彦が、白い喉を仰け反らして吐息を吐く。まだほんの入り口を触られただけなのに、奥の奥まで痺れるような快感で疼きはじめた。
 克彦の性器がぴくんと震え、また露を溢れさせる。
 本田が触れる全ての部分から伝わる快感が腰に重く溜まり、自分の意思で身体を動かすことができない。ぐったりと力が抜けてしまった両足は、いつの間にか割り込んだ本田の身体で恥ずかしいくらい広げられ、性器は壊れた蛇口のように蜜を垂れ流しているからか、後ろのすぼみははしたないくらい淫靡な音を立てて指をくわえ込んでいる。
 もっと奥に…欲しい…
 痺れきって、快感に翻弄されるだけの身体をくねらせて自ら奥に誘い込む余裕もなく、されるがままだ。
「ほんだ…さ…もうっ…おねが…ぃ」
「克彦…俺のものに、なってくれるのか?」
 本田の声は、震えていた。
 本田が心の底から望んでくれている…その気持ちが克彦の体中に伝わる。
 

 必死で頷く克彦に柔らかく口づけると、本田は身体を離し、それまで少しも乱さなかった服をゆっくりと脱ぎ捨てた。
 正面からは図柄が分からないが、本田の身体一面に彫り物が入っていることが分かる。そして、雄々しく勃ち上がった性器。
「…怖いか?」
 痺れの去らない身体と思考は受け入れる事しか考えていないようだ。怖くない。本田の全身から発せられる気は苛烈なまでの慈愛に満ちている。激しさだけなら恐怖で逃げ出したかも知れない。でも…克彦はゆっくりと手を伸ばした。本田の指が絡まる。しっかりと握りしめた手を優しくベッドに押し当てると、ゆっくりと克彦に覆いかぶさっていった。

 

 体格に見合った巨大な刀身が克彦の蕾にあてがわれる。先端部分で克彦自身の蜜で濡れそぼったそこをめいっぱい押し開かれ、張り裂けそうな恐怖で身体に緊張が走る。
「少しだけ我慢しろ…」
 そう言う本田の声も苦しそうだった。克彦の準備が出来ているからと言ってそこは、女のように易々と受け入れる場所ではない。許容範囲を超えそうな太さに、克彦の蕾は知らず抵抗する。ぎちぎちと締め付けるそこに構わず、本田は熱く焼けた刀身を根本まで一気に突き入れた。
「あああぁぁーっ!」
 初めての衝撃に克彦の背中が弓なり、悲鳴に近い叫びがほとばしり出る。
「ああっ…!んっ…は…ぁっ…はぁっ」
「克彦、愛してる…っ愛している…」
 衝撃が去るまで本田は刀身を沈めたまま、克彦の身体を抱き締め、せわしなく動く胸元から、のけぞる白いのど元まで優しいキスを降り注ぐ。克彦の身体の中は狭く、熱く蠢いている。手のひらが優しく動くたびに、キスを落とすたびに、刀身に絡みつき奥へ奥へ導こうとする。
「大丈夫か?」
 せわしなく動いていた胸元が大人しくなり、身体の強張りも解けてきたころに、労るような言葉がこころをくすぐる。
「ん…」
 こっくりと頷く顔には僅かに汗が滲んでいて、柔らかな髪が張り付いている。そっと掻き上げてやると、その手に愛おしそうに頬を寄せてくる。
「本田さん…ひとつに、なれた…」
「ああ…もう私のものだ。誰にも渡さない。何処へも行かせない」
 克彦の心にじんわりと響いてくる言葉。
(あなた以外のものにはなりたくない。何処へも行かない…)
 

 そう思っただけで、心がきゅぅとなり、本田の刀身をも締め付ける。
「…克彦、少し手加減しろ…お前の中は気持ちよすぎだ…」
 苦笑いと共に、軽く揺すり上げられる。
「あぁ…ん…」
 圧迫感だけで克彦の良いところが刺激され、また先端を湿らす。
「気持ち良いのか?」
 体中に響く低い声。
「ん…はやく…」
 激しく突いて、擦って欲しい…
 深々と突き刺さったものがギリギリまで引き抜かれ、またゆっくりと挿入される。克彦の身体の中を探るように、克彦の反応を楽しむように、そして自分の存在を身体の中に刻み込むように、ゆっくり大きくスライドさせる。長大な刀身をきつく締めげるだけでは足りないのか、克彦の内壁がざわざわと震えながら絡みつく。
「んっぁ…んんっ…あんっ…」
 擦られるたびに背筋を熱く貫くような快感が走り、身体だけではなく、心までざわざわとさざめく。愛しい…その想いが快楽を何倍にも膨れあがらせ、克彦は我を忘れて嬌声をあげ続けていた。
「ほんだ…さ…っ!もうっ…!いっ…く…!」
 まだゆっくりとした動きだけなのに、快感が体中を駆けめぐって腰に溜まっている。
「いいぞ…いかせてやる」
 

 本田はぐっと克彦の腰を抱き締めると、それまでとは打って変わった激しい動きで克彦の内壁を擦りあげ、突き上げる。身体がぶつかり、どちらのモノか分からない蜜が密着した蕾から漏れ出て恥ずかしい音を立てていた。本田の激しい突き上げで壊れた人形のようにはね回る克彦の身体を押さえつける逞しい腕。
「あああっ!んあっ!ほんださっ…!ああっんっ!」
「克彦っ」
「あっいいっ…!いっちゃう…!ああぁあっ!」
 克彦の張りつめた性器から白濁した精液が飛び散り、中が一層きつく本田の刀身を締め上げ、内壁が吸い込むように絡みつく。
「…くっ…」
 汗で湿った克彦の身体をぎゅっと抱き締めながら、本田は克彦の身体の奥深くに、精を放った。
 絶頂を迎えた余韻で蠕動する克彦の中で、本田の性器は萎える様子もなくいきり立っている。

(これは…やばすぎるな)
 男を抱くのは初めてだが、自分がここまで翻弄されるとは思ってもいなかった本田である。男だからなのか、克彦だからなのか…克彦以外の男を抱く気も無いので確かめようがないが…
 固く抱き合ったまま、また本田が動き始める。
「あ…っん…や…だ…まっ」
 全身を朱に染め、荒い息をついている克彦にはお構いなしに、更に身体を深々と繋ぐ。何度か抽挿を繰り返したあと、本田は克彦の身体を俯せにひっくり返し、後ろから覆いかぶさっていった。少し硬度を落としていた克彦の性器を手のひらにすっぽり収め扱く。
「んぁっ…はんっ」
「すまん、もう少しの間離れたくない」
(絶対に離さない…一生俺の側に置く…)
 最初からそのつもりではあったが、新たに確かめるがごとく、白く滑らかな背中を舌で愛撫しながら後ろから突き上げ、形の良い性器を扱く。
「はあぁっ…あん…ほんだ…さんっ…そんなに…しない…」
 ありとあらゆる場所を刺激され、克彦はまた忘我の地に向かっていった。

「んんー!」
 今日はまた一段と気持ちの良い目覚めだ。
 克彦は大きく伸びをしながら仰向けになろうと…したら、本田が後ろから抱き締める腕に阻まれてしまった。
 あ…
 昨夜の記憶が蘇り、一人で赤面する。
「ん…」
 本田が目覚めを迎えたのか、身じろぐ。
 いつもはきちんと撫で付けた髪が崩れて顔にかかり、それがまたいつも以上に格好良くて、克彦はじっと見つめてしまった。ゆっくりとまぶたが開かれ、瞳に克彦の顔が写り込む。
「…起きてたのか?」
「ううん。今、目が覚めた」
 声が擦れている…思い当たる事があるだけに恥ずかしくなりそっと胸元に顔を埋めると、裸だったはずの本田は肌触りの良いパジャマを着ている。良く見ると、自分も似たようなものを身につけていた。本田に抱かれている途中からの記憶がぷっつり無くなっているが、本田のことだから世話を焼いてくれたのだろう。洗い立ての良い香りがするベッドリネンと本田にくるまれて、これ以上はないくらい幸せな朝だ。
「あ…パジャマ、お揃いだ。何時の間に…」
 本田は軽く微笑みながら、克彦に口づけた。
「隠しておいた」
「もう…」
 プライバシーもへったくれも無い。全てを自分の思い通りにしたがるこの男は、自分以上に我が儘なのでは?と克彦は思った。けれどもその我が儘は克彦を喜ばせてばかりいる。

「…仕事、行かなきゃ…」
 照れ隠しが半分でそう言ったのだが、この数日、仕事が手に付かなかったお陰で溜まりまくっているのも事実だ。
「わかった…」
 そう言って起きあがると、克彦を抱き上げバスルームまで運ぶ。
「わわわっ…!」
 正気でお姫様だっこは恥ずかしいモノがあるが…
「歩けないだろ?」
 そう言って脱衣所に立たせた端から腰に力が入らず、倒れそうになった。
「支えとくから、綺麗にしてこい」
 克彦のパジャマをさっさと脱がし、自分も裸になる。
「あ…」
 本田の身体に掘られた刺青が目に飛び込む。
「これか?」
 くるっと振り向いた背中には…
「これって…」
「弥勒菩薩」
 龍とか虎とか、恐ろしげなモノが掘ってあるのかと思ったら…
「半跏思惟像…」
「ああ…極道には似つかわしくないかも知れんが…」
「そんなことない…本田さんは俺を助けてくれた。俺にはこの弥勒菩薩より優しい顔を見せてくれる」
 その優しげに微笑む弥勒菩薩の口元にそっと指を這わせる。
「…俺と弥勒菩薩と、どっちが大事なんだ?」
 拗ねたように振り返る本田が愛しくて、菩薩ごと背後から抱き締める。
「弥勒菩薩のような本田さん」
 

 自宅の外に出たら、朝日に似合わない黒服の厳めしい集団が整列していた。出勤ラッシュの時間帯で、自宅マンションやその周辺のサラリーマン達が何事かとチラ見しながら歩き去っていく。マンション内から出てくる人達の邪魔にならない程度の隅にベントレーが駐車してあるが、その脇を通って出掛けていく住人達にも丁寧に挨拶する組員の姿はなんとなく滑稽だ。
 風呂で丁寧にマッサージをしてくれたお陰でなんとか歩けるようにはなったが、足元の危うい克彦の腰に手を回して歩く姿もきっと見られているだろう。
「今日は無理をするな」
 ベントレーに乗り込むと、本田は後部座席であるにも係わらず克彦のシートベルトをしっかり止めながらそう言った。
「こいつを付けておくから、荷物持ちにでも使え」
 助手席の方へ顎をしゃくると、本田の事務所内を案内してくれた男が『よろしくおねがいします』と言いながら頭を下げてきた。今日はどうやらまともな格好をしている。回りの黒服達とも違い、克彦の側にいても違和感がないような趣味の良いスーツを着ている。
「あ、今日は良い服着てる…」
「お前の仕事場だからな。アルマーニを着せてる」
「ええっ!ちょっと、なんで俺より良い服着てんの!」
 びしっと助手席に指を差しながら、本田に怒りの視線を放つ。
「あんただって、なんか上等なスーツ着てるしっ!」
 本田をあんた呼ばわりしながら助手席を指さしながら、それは凄い剣幕でわめく。
 そんな克彦も可愛くてしょうがないとばかりに、本田は笑いながら見つめていた。

END

 

 

5
きっかけ2

雪柾と克彦