空・翔る思い

安土と空

12

「うーっさむっ…!」
 空はコンクリートの床を水と消毒薬で洗い流し、簀の子を敷き、新聞紙を敷き、保温材を敷き、別のボランティアが洗い終わったケージを並べ毛布を敷き詰めた。もうしばらくしたら運動場で遊び疲れた犬たちがここに戻ってくるので、みんなを所定の場所に入れたら今日の仕事が終わる。
 安土組が買い取った劣悪ペットショップの繁殖場は、繁殖に使われていた動物たちを里親に出すための施設に改装され、空はここで週二回、ボランティアとして動物たちの世話をしていた。
「空さん、こっちこっち!」
 田島が遠赤外線ヒーターの前で手を振っている。
「ちょっと暖まってから帰りましょう。そのままで風邪でも引いたら困りますから」
 空は素直に頷いて、ヒーターまで小走りに駆けていった。ヒーターの前に座り込み目をつぶっている様子は、どこかの猫のようである。
「あったかーい…」
 田島が空の背中にダウンジャケットを着せ掛ける。
「ありがと」
 今年も暖冬のようだが、水を扱う仕事なので風邪をひかないようにと、安土がプレゼントしてくれた物だ。空だけではなく、最初から参加しているボランティアの全員に支給してくれて、何から何まで恵まれた施設だった。暫く田島ととりとめのないことを話していると、遊び終わった動物たちが次々と帰ってきて、積極的に自分の寝床に帰って行く。
「あ、空君、田島さん、お疲れ様〜」
 外で動物たちの面倒を見ていた人達も帰ってきて、ヒーターの前に集まってきた。
「行橋さん、小田さん、お疲れ様。あとはごはんの準備お願いしますね」
「ほいよ。あ、空君、忘年会だけど、駅前のお店でやることになったけど、来られそう?」
「はい!行っても良いって…」
「そか、良かった。空君いないと話しになんないからな。と言うことは田島さんも参加…だよね?」
 田島はよろしくお願いします、と軽く礼をした。正直なことを言えば、ボランティアの全員が、田島がなぜここにいるのかはっきりとは知らなかった。空は劣悪ペットショップを買い取った地方のショップの知人の息子と言う事になっていたが、田島の事は空を送り迎えする人、としか聞いていない。が、空にべったりで甲斐甲斐しく世話を焼きながらボランティアの仕事も手伝ってくれるし、礼儀正しいしので評判は悪くない。
「じゃ、俺、車取ってきます」
「僕も一緒に駐車場まで行きますって…」
「とんでもない!空さんはここで待っててください」
 建物に近い駐車場にはボランティアの仕事に使う車を置いているので、個人所有の車は歩いて十分程の場所に止めることになっていた。二人のこの押し問答も毎回のことで慣れてしまい、空の制服が有名私立校のものでもあることから、どこかの御曹司、という事にして全員勝手に納得していた。
 空は動物たちにお休みの挨拶をして回った後、ダウンコートを自分のロッカーにしまい、私服のコートに着替えた。
「空さん」
 今出て行ったばかりの田島が戻ってきた。
「安土社長がお迎えに来られました」


 安土はここを買い取った会社の東京進出を手伝った人物、と言うことになっていた。空の父親というほど年はいっていないし、兄と言うには離れすぎているので、これも勝手に『叔父さん』と皆は思って納得している。あれこれ寄付してくれる有り難い支援者なので、根掘り葉掘り聞いて機嫌を損ねるのもためらわれる。それに気安く話しかけられる雰囲気でもない。たまに付いてくる空の弟にも熊のような付き人と神経質そうな副社長が付いてくるので、きっと御曹司の実家と仲が良い会社の社長と副社長に違いない、と勝手に思っている。
 部屋に入ってきた男は空にまっすぐ視線を向けると軽く頷いた。
「安土さん…」
 普通の人ならその鋭い視線に見つめられただけで逃げ出したくなるのだが、空は動物と接するときとはまた違う柔らかな表情で安土を見つめ返す。
「もう帰れるのか?」
「うん。今、田島さんが車を取りに行こうとしていたところ」
「そうか。じゃあ俺の車で帰るぞ」
 空はこくんと頷くと、後ろを振り向いて行橋と小田に声を掛けて帰って行った。


「なあ。あの安土さんって、どういう人なんだろうな」
「…さあ。聞いたら殺されそうだから聞けないな」
「ああ。ここだけの話し…安土組ってのがあるんだけど…」
「組って…ヤクザ?」
「ああ…」
「動物好きのヤクザ…?」
「里親探しのボランティア団体お勧めのヤクザらしいぞ」
「なんだそれ…」
「空君を推薦してくれた所が、世話になったって」
「うちも世話になりっぱなしだな」
「ああ…」
「まあ…いっか」
「いいんじゃないか?」


 安土と結ばれてまだ二月。一歩前進したのは身体の関係だけではなくて、空自身にも小さな目標ができた。成績がそれについて行けるかどうか不安だが…将来どう転ぶか分からないが、獣医学科を目指すことにしたのだ。獣医師になることもできるし、父の会社の動物管理部門を手伝うこともできる。
 取りあえず成績を上げなくてはいけないが…安土と一緒に過ごす時間も欲しい。それは安土も同じようで、こうやって頻繁に空を迎えに来る。
 運転手と助手席に座る矢崎が気になるが、抱き締められ、キスをされる心地よさですぐに意識の中から飛んでいってしまう。
「安土さん…あの…」
 明日の忘年会のことを話しておかなければ…
 安土から少し身体を離し、軽く一呼吸して気持ちを整えた。
「明日の忘年会、駅前のお店でやるんだって…19時からだそうです」
「そうか…じゃあ20時30分に迎えに来る」
 迎えの時間が少し早くないかな…と思ったけど、今日の午前中まで期末試験だったので、この10日間ほど安土とゆっくりした時間を過ごすことができなかった。その上、試験が終わった直ぐ後はボランティアの仕事に参加したのでさっきのキスも3日ぶりくらいだったのだ。明日は試験休みだし、午後のボランティアまでは何も予定を入れていないので…


 安土の家の居間に入るなり貪るような激しいキスをうけた。
 数え切れないほど抱き合ったけれど、今からどんなことをされるのか考えると恥ずかしさで消えてしまいたくなる。普段の自分とのギャップが激しすぎて、みんな本当にこんな行為をしているのか、疑ってしまう。
 ほんの少し、安土の指が項を這うだけで背筋がゾクゾクし始め、耳たぶを甘噛みされると吐息が漏れてしまう。
 安土が買ってくれた柔らかい手触りのセーターの裾から忍び込んできた手が脇腹をくすぐり、背中をまさぐる。
「ふぁ…あぁ…んっ…だめ……っ…トラが、みてる…」
 安土は小さく笑うと、空を抱き上げ大股で寝室へ向かった。


 ベッドにそっと降ろされ、アンダーシャツごとセーターをすっぽり脱がされる。安土の家は全体が常に快適な温度と湿度に保たれているが、それでも少しひんやりした。貧弱な身体を真上から見下ろされて恥ずかしい事もあり、両腕で胸元を隠し目を伏せてしまった。
 安土はそんな自分を愛おしげに見つめながら、自らも服を脱いでいく。
 男らしい堂々とした身体が露わになり、空の気持ちを高ぶらせる。空は、安土の身体が好きだ。大きくて、優しくて、空を温かく包み込んでくれる。
「空…」
 空の名前を呼びながら腕を取り、手の平に指を絡ませてそっと握る。そのままベッドに柔らかく押さえつけ、安土が、覆いかぶさってきた。


 ボランティアを始めると大人の人達と交流する機会が多くなり、安土組の人達がやはり特殊な職業の人達なのだな、と実感。ピラミッド型社会の安土組では安土の言葉が絶対で、それに対して議論することなど無い。わいわいがやがやと酒を酌み交わして談笑する事もなく、安土が数名の幹部と宴席を打っていても、他の組員は部屋の隅に控えて必要なときに世話を焼くだけだ。
「空君、あのさ…聞きにくいこと、聞いても良い?」
 昨日、空と一緒に働いていた柳井という一回り年上の男が、ほろ酔い加減で気が大きくなっていたのか、ボランティアの全員が疑問に思っていたことを口にした。
「いつも迎えに来る安土さんって、空君の親戚?」
 全員の視線が空に集中した。
「いいえ…うちの上の階に住んでいるご近所さんで…拾った猫の里親捜しで凄くお世話になって…他にも凄くお世話になってて…家族ぐるみでお付き合いしてます」
「へえ…どんなお仕事の人?」
 空はどこまで話して良いのか分からず、隣で静観している田島を見つめた。
「空さん、安土組長には必要なときはきちんと話すように言われてますんで…空さんをお迎えに来ていらっしゃるのは、桐生会・安土組組長です」
 予想はしていたかもしれないが、はっきりと肯定され、水を打ったように静かになってしまった。
 話しを振ってしまった柳井も暫く考え込んでいたが…
「でも、空君は、まさかヤクザになるんじゃないよね?」
「えと…僕は組の仕事には係わっていないけど、みんな大切な家族です。血は繋がってないし、ご近所でたまたま知り合ったんだけど…でも、とっても大事な人達なんです」
 話しているうちに、空の気持ちはすーっと晴れ、自然な笑顔がこみ上げてきた。世間一般のヤクザに対する考え方はどうであれ、自分にとって安土組は恥じるような組ではない。
「俺たちはさ、職業とかで差別するつもりは無いけど、最近のペット産業にはヤクザも進出してきていて、動物たちを金儲けの手段にしてる。安土組はどうなんだろう?やっぱり新しくできるショップの利権とか噛んでるのかな?」
 正直なところ、空にはそう言ったことは全く分からなかった。
「相談は受けますが今のところ経営に加わるかは決定していません。クリーンなイメージが必要な商売ですから…堅気の人から見れば俺たちは汚いやり方で儲けているように思われるでしょうけど…めちゃくちゃなブリーディングでは長い目で見れば結局損をするのは分かってます。一攫千金よりも安定した収入の方が良いのは俺たちだって同じです。うちは特に、係わってる店や会社を倒産させたらペナルティ付くし売り上げ伸びなかったらノルマ底上げされるし。普通の会社の方がよっぽど楽ですよ」
 代わりに答えてくれたのは田島だった。
「ここを買い取って保護施設にしたのも、そもそもあの店を買い取ったのも、全て空さんのためです。確かに俺たちは金儲け第一かも知れませんが、空さんがいる限り、ペット業界では空さんをがっかりさせるような事はしません。それくらいしか約束できないけど…」


「あ、安土さん…」
 いつの間にか、田島の後ろに安土が立っていた。
「そのくらいで止めておけ、ぼろが出るぞ…。こいつが言ったとおり、ペットや動物愛護に関しては、空に任せる。お前達が正しい方向を教えてやってくれ」
 ヤクザに頼まれごとなどされ、柳井は恐縮して姿勢を正した。
「正しい考えなんて無いですけどね。ここは恵まれすぎていて、それも良いのか悪いのか分からない。全ての組織に均等に良い環境が与えられると良いんですけどね…」
「それは違うな。全てに平等に係わるなんて超人にもできない事だ。それこそ末端の末端にまで目が届かなくて悲惨なことになる。自分の許容範囲を越えれば足元すら危なくなるぞ。安土組は空が直接係わることにしか手を出さない。空の器が大きくなれば受け入れる範囲も広がるだろう」
 三十年近く生きてきて、ヤクザに教えられるとは思っても見なかった。と言うことは空にべったりの田島もヤクザで、だとするとその辺のアルバイト学生や自分の会社の後輩より余程熱心に仕事をしている。それがどんな小さな事であれ、自分から先に先に動いていく。何も言わずとも最善最速で仕事を片づけていく。
「僕は…大きくなれるかな…安土さんと一緒に歩いていけるようになるかな…」
 追いかけるだけで精一杯で、差し伸べられた手を必死で握って転ばないように歩く。時々止まって、空が息切れしないように気も配ってくれる。
 大事に大事に育ててくれる安土へ対する思いがどんどん膨れあがり、みんなの前にいるというのに身体の芯がズクンと震えた。
「えと…じゃあ僕、安土さんが来てくれたので帰りますね」
 慌てて立ち上がって靴を履くと、安土がコートを着せてくれる。みんなの視線を浴びる中で安土にエスコートされるのは恥ずかしいなと思ったが、ボタンまで掛けて貰い、差し出された手を繋いで店を出た。
 だって安土は誰よりも大切な人で、空の全てを受け入れてくれる人なのだから、安土の事も全て受け入れたい。


「なんか…言うこともやることも、スケールが違うな」
 安土と空が帰った後、残されたボランティア達は気が抜けたようになっていた。
「ああ。でもあれは…空君のためだけに動いてる、って事だよな?」
「まあそうだな」
「近所で仲が良いからって、それだけでそこまでやるか?」
「…まあな」
「下世話な話ししてもいいか?」
「やめてくれ。何が言いたいのかは良く分かる」
 今までも何となく怪しいと思っていたが、これはもう確定事項だ。
「帰り際、空君がやたらと色っぽかったのは…」
「だからそれ以上言うなって」
「手も繋いで、うれしそうだったな」
「心の中で地面に穴を掘って、そこに向かって叫べよ」
 全員が一瞬静かになり、どうやら同じ事を叫んだようだった。


「楽しかったか?」
 車の中で安土が訪ねた。
「うん。料理も美味しかったし、今度安土さんとも食べに行きたいな」
「いつでも」
「ありがと。トラとくみちょうはちゃんとお留守番できてるかなぁ…」
 あの二匹は馬が合うのか、いつもピッタリくっついて眠り、起きているときは常に一緒に暴れ回っている。
「ああ。今日は陸が刺身を差し入れてくれたそうだ」
「トラとくみちょうに?僕たちのは?」
「…ない」
 後でもんく言わなきゃ…と空が笑いながら答えると、安土も笑いながらそっとキスしてくれた。
 受け入れるって結構大変なことで…キスですらいっぱいいっぱいだ。自分ばかり気持ちよくて良いのかな?安土さんには何もしなくて良いのかな?分からないことも多い。
 自分の進路や将来のことはゆっくりとしか進んでいかないが、安土とのこういう関係は考えるヒマが無くて、いつもあっという間にワケが分からなくなってしまう。ヒマなときやぼーっとしているときに考えると、頭がのぼせてしまうのでそれもできない。
 慣れるしかないのかな?
 中には女の子と関係を持ったことがある子もいて、女の子は演技するそうだ。気持ちいい振りとか。それができたら毎度くたくたにならないのにな、とも思う。男の子も、普通なことをしながら頭の中でもっといやらしいことを考えて興奮してたりするのだそうだ。
 もっと…ってどんなことをするのかな…
「空?」
「ひゃっ?」
 

「車の中で、何を考えてた?」
 安土の部屋にたどり着くと、居間を突き抜け寝室に直行されてしまった。
 ベッドに仰向けに転がされて、ジーンズの上から下半身に触れられ、自分のそこが既に反応し始めている事に気が付く。
「あ…」
 特に具体的には考えていなかったのだが…
「言うまでおしおきだ…」
 安土は笑っていたが、あっという間に裸に剥かれ、慌てて将来のことを考えていた、とか半分だけ正直に話した。それでこんなになるかな、と自分でつっこんでみたけど…
「そうか…今回は英語が難しかったそうだな…」
 鎖骨をなぞっていた安土の指が、空の小さな乳首にちょんっと触った。びりっと快感が走り、空が首をすくめる。
「んっ…」
 肯定の言葉なのか喘ぎなのか自分でも分からない。
「語学は矢崎に教えてもらうと良い。陸もいろいろ教えてもらってるはずだ…」
 今度は腰骨の辺りを親指で押しながらさすられた。そこはとても感じるところで、空の性器がぐっと硬度を増し、足が震える。
「あづちさ…っあっ」
 安土は自分のズボンの前をくつろげると、かなり大きくなった自分のものを空の性器に擦りつけた。
「あっ…あっ!」
「白石家は、もともと理数系に強いのかな?父親も数学だけは満点を何度か取ったことがあると言っていたぞ?」
 ぬちっ…と微かな音が響く。どちらが零したものなのか…
「あづちさ…」
「何を考えていた?」
 それからはもう、すごく意地悪された。
 正直にクラスの男の子達が話していたことを言ったのに…
「他の奴らの前で思い出したりするなよ?空は敏感だから、すぐに表情に出て気が気でなくなる」
 ずん…と圧迫感と痛みを伴って安土が入ってくる。でもそれは最初だけで、安土はこれ以上ないくらい空を気遣いながらゆるく腰を使う。空が十分に感じて我を忘れるまで。演技などする余裕も必要もなく、なぜ他の人はそんな事しなくてはいけないんだろう、と思う。
「あづちさんも…きもち良い?」
「ああ…分からないか?」
 ぐっと、お腹の中のものが大きくなる。
「もっと…して…あづちさんが、良いように…」
「もう少ししたらな…余計なことは考えるな、空」
 空の良いところに先端をあてがい円を描くように腰を使うと、空の声が一層高く激しくなる。
「やっ…あぁっ!」
 空の中が目覚めたようにざわつき始め、安土のものに執拗に絡み始めると、空は安土に縋り付いて腰を押しつけてくる。その時は少し意識が昏泥しているのか、どんな言葉にも素直に反応してくる。
「も…い…きもちいっ…んっあぁっ…あんっ…あんっ…!」
 背をしならせ、腰を押しつけ、しがみつきながら、空は何度も『好き』と繰り返しながら張りつめた精を放った。


 毎度の事ながら、空は安土との行為の最後の方になると自分でもどうなったのか思い出せないくらい高揚してしまう。
 でもそれは、安土だけが知っていればいいことなんだからと、教えてもらえない。
「トラとくみちょうも、知っているだろうな」
 笑って茶化す安土に、空は枕を投げつけた。
「もうっ!しらないっ!」
 今日はまたボランティアに行かなきゃならない。空はまだ笑っている安土からぷいっと顔を反らせ、急いで支度を済ませる。
「空、送っていくぞ」
「え?安土さん、仕事は?」
「今日はボランティアの日だ」
 定期的にとは言えないが、空と一日中居たいがために、ボランティアの日を、安土は作ってしまった。
「うちの連中も十人ばかり連れて行く。隣の空き地を買ったんで、昼から整地する予定だ」
「え…隣の空き地って…」
「広い方が何かと便利だろう。使い方はお前達で考えると良い」
 そう言いながら空とお揃いのジーンズにワークシャツを着た安土は、いつもと違って5歳は若く見える。
 もっと驚いたのは、地下駐車場で迎えの車を見たときだった。
「軽トラ…」
 その後ろに二台のワゴン。
 安土と空が乗るのは後ろのワゴンで、その後ろの護衛はメルセデス。
「俺たちが乗るワゴンも一応防弾仕様だが…まあ今日だけだろうな」
 もし何かあった場合、やはりセダンの方が安全なのだそうだ。安土の先代には空と陸のことを許してもらったが、まだまだ問題は残っている。
 その事を忘れてはいけないが、空にはできるだけ楽しく有意義な時間を過ごして欲しい。
「これからの先何十年を、良い思い出で埋め尽くしたいんだ」
 空にはまだ漠然としか見えない将来だが、安土にはもっと先まで見えているのだろうか。
 「ずっと安土さんの隣にいるよ。安土さんも、ずっと側にいて下さいね」
 空は下唇を噛んでにっこり微笑むと、安土が差しだした手を取って、元気よくワゴン車に乗り込んだ。

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いつか動物関係のボランティアをやってみたいな、と思っているのですが、なかなかできませんね。最近急に寒くなったので、お外の猫ちゃん達が風邪引きませんように。今日はうちのくみちょうの命日です。そのささやかな記念に。

2009年12月22日

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