亮の日記
やはりいつもの服装が落ち着きます。熱も下がり、気分爽快です。本家では丈夫なことだけが取り柄だったのに、ここへ来てからは熱ばかり出しています。精神的な物だと言われましたが、こんなに幸せなのに何故なのでしょう?本家にいた頃の方が余程辛かった…どんなことがあってもだんな様のことを信じていたので、精神的には今よりずっと強かったのかな?今は幸せすぎて軟弱になったのかもしれません。
辛いことが多かった頃は何が何でも生き続け、だんな様に一目でも会おうと気力を振り絞っていたけれど、正直なところ今は毎日のほほんと暮らしています。ただ会いたいと願っていたあの頃に比べると、だんな様に料理やお茶を褒めてもらいたいとか、笑いかけてもらいたいとか、少しでも好きになって欲しいとか、贅沢にもなりました。僕自身、これ以上どうなりたいのか分からなくなってきました。
本家に帰るのは最初から決まっていること。本家の叔父にもそう言われました。僕は成人するまで本家にとって必要な人間なのだそうです。でも、色々あってそれまでのように役に立たなくなったから、分家に貸し出したのだそうです。成人するまであと二年と少し。役立たずの僕にお金を払ってまで助けてくれただんな様に一生懸命お仕えしなくては…そんなことしかできないけれど、それしかできないのだから。だんな様はそこにいてくれるだけで良いのです。不自由なく大らかに、幸せでいてくれたら良いのです。
僕が本家に帰ってもお屋敷中に明るい光と清々しい空気が溢れ続けますように。とりあえずお掃除がんばります。