亮の日記

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久実先生にお電話したら、夕方から暇になるのでお屋敷まで来て頂けることになりました。板井さんが焼いてくれたブルーベリー・パイでおもてなしをしながら、僕が時々無意識に外国語を話しているらしいことを相談しました。
「そうだねぇ、私は聞いたことがないので分からないが…どんな気分の時に話しているのかわかるかい?」
 あの時は、だんな様がお風邪を引いてしまうと思って心配だったから…
「そうか。じゃあタオルを渡しながら、風邪引けこの野郎、とは言わないよね?」
 とんでもないです。そんなことこれっぽっちも思ってないです。久しぶりに話しかけたので緊張して…お世話をできることがうれしくて…それだけです。
「きっと亮君の先祖の血が騒いだんだろうね。みんなとても優しい人達だったんだろうね。君は金髪碧眼で、先祖の血を濃く受け継いでいる。きっと言葉だって、周りが日本語だから日本語で話しているのだろうけど、心の中では君の祖先が慣れ親しんでいた言葉を使っているのかも知れない。咄嗟の時に慣れ親しんだ言葉が飛び出すのは良くあることだよ。気にすることはない。私も聞いてみたいな、その言葉を」

 久実先生に夕食を勧めてみましたが、ご用があるそうですぐにお帰りになりました。久実先生は最近恋人ができたのですって。久実先生より二つ年上なのだそうです。久実先生はだんな様より年上なので、なんだかとても大人のカップルで素敵です。
 だんな様と秋一さんも、今からずっと付き合っていかれたら落ち着いた大人の雰囲気があるカップルになるのかな?
 僕も、いつまでもお二人の側にいることができればいいのに…