亮の日記
僕も昔、だんな様から綺麗な宝石のペンダントを頂いたことがあります。頂いて直ぐに僕の手を離れましたが、そのほうが良かったと思います。本家のお屋敷に連れて行かれて直ぐ裸にされ、それきり僕は自分のものを何一つ持つことは許されませんでした。頂いたばかりのペンダントも、その時取り上げられたと思っていたら…このお屋敷に帰ってきたとき、悠木さんが僕に返してくださいました。連れ去られるときに暴れたので、その時に落としたのでしょう。ペンダントに嵌っていた宝石はだんな様のお家に伝わる高価な宝石だったので、このお屋敷を離れたくなかったのかな?
でも、だんな様はそれを途中で処分しようとなさったのですって。その時は悠木さんがこっそり隠して、そしてまた、僕の元に戻ってきました。
宝石には人の心が宿るそうです。この宝石を手に包み込んでいる時は、とても安らかな気持ちになり、心が満たされます。きっとだんな様のご先祖様達の優しさが詰まっているのでしょう。
僕がいつかこのお屋敷を離れるとき、この宝石は置いていこうと思います。その日のために僕は毎日この宝石に語りかけ、祈りを捧げます。
だんな様と、だんな様が愛する人達が幸せでいられますようにと。
今日もお祈りをしていたら、巽さんがお部屋に訪ねてきました。
「眠っていたの?明かりがついていたので何度か声を掛けたけれど返事が無かったから…明かりをつけたまま眠っていたのかと思ったよ」
それで僕は宝石の話しをしました。でも、僕がお祈りしていたことはだんな様には内緒にしてくださいとお願いしました。
「了解。亮と私だけの秘密だね…二人だけの秘密なんてわくわくするよ。もっと沢山、楽しい秘密を作ろう」
そう言って笑っていらっしゃいました。
巽さんって、素敵な人だな…