亮の日記

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今日は日曜日。みんなに中国茶を楽しんでもらう日でした。巽さんとは何度も練習したけれど、だんな様に楽しんで頂くのは初めてです。
 でも、僕が一緒にいても良いのかどうかわかりませんでした…だんな様には嫌われているし、僕がいないとお茶を淹れる事ができないし…少しでも人が多い方が良かったし、茶器は6人分あるし…それで久実先生と巽さんの部下の山崎さんもお誘いしました。久実先生は2、3時間なら…とおっしゃいましたが参加して下さって、山崎さんも来てくださいました。
 そして僕は久実先生に、外国語の独り言、を聞かれてしまいました。皆さんが珍しそうに見ていたので、僕はとても緊張していて…手順をぶつぶつ、ラテン語のような言葉で囁いていたのだそうです。久実先生は、ラテン語ではないとおっしゃっていました。思い当たるのはヘブライ語です。さすがにお医者様もヘブライ語は使わないのではっきりとは分かりませんが…

「必死な顔をして、とても可愛らしかったよ」

お帰りになるときに笑ってそうおっしゃいましたが…日本語じゃなくて良かったのかも知れません。急須を温めて、そのお湯で湯飲みを温めて、洗茶して、とか日本語で呟いていたら緊張しているのが丸わかりですものね。美しく優雅な動作で点てなくてはいけないのだから…

 だんな様は心配していたほどご機嫌も悪くなく、かといって上機嫌でもなく…普通にお茶を飲んだりお茶請けを摘んだり、久実先生とはたくさんお話しをしていました。だんな様は特に、炒った松の実がお好きなようで、板井さんが何度も炒りたてを運んできてくれました。
 だんな様の指はとても綺麗で長く、松の実を摘んで口まで運ぶ様をじっと見つめてしまいました。秋一さんとお揃いのプラチナのリングが、時々日の光を浴びてきらっと輝きます。秋一さんはだんな様からもらったサファイヤのピアスも嵌めていて、手元も耳元もぴかぴか光っています。
 なんだかお二人の心を見ているようで、心が温かくなりました。