亮の日記

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 今日は日曜日。巽さんはご用があり、秋一さんはバイト先のお友達とお出かけするそうで、だんな様はお一人です…もちろん、メイドの女の子も板井さんも僕もいますが…
 いつも休日は賑やかなお屋敷なのに、今日は緊張感が漂っていました。
 だんな様のご機嫌は悪くなかったので、そのまま気持ちよく休日を過ごして頂くために、失敗は許されません。
 
 でもそんな日に限って失敗するのですよね…

 今日の失敗は本当に情けない失敗でした。あり得ません。二度と無いと思います。
 だんな様も二度と嫌だと思います。
 僕は今日、だんな様のパジャマを勢いよく破ってしまいました…

 僕がテラスから居間を抜けて…玄関の正面にある大きな階段を上ろうとしたら、だんな様が降りてこられたのです。丁度僕の真ん前だったので、道をお譲りしようと一歩横に除けたのですが…階段を踏み外しそうになって…正面にいただんな様に思いっきり掴まったのです。ちょうど胸元の開いたところで…前ボタンを全て引きちぎってしまうくらい、凄い勢いで掴まったのでした…

 あっと言う間の出来事でした…

 だんなさまもびっくりして露わになった胸元と僕を交互に見ていました。
 僕はもうどうすればいいのかわからなくって、その場でうろたえていたのですが…だんな様が、新しいパジャマを出しておくように、とおっしゃったので大急ぎで準備しました。
 新しいパジャマを持ってお部屋に行くと、だんな様はもう部屋着に着替えていらっしゃって…僕は破ってしまったパジャマを持って何度も謝りながら部屋を後にしました。
 心の底から謝ったけれど、だんな様は何もおっしゃいませんでした。

 そう言うわけで、今日はそれ以来、だんな様にお会いするのが恐くて大人しく引っ込んでいました。巽さんと秋一さんが夕食の時間には帰ってこられたので、仕方なしにお給仕をしました。僕は緊張して、スープを誰か目がけてひっくり返さないだろうか、とか、お皿のお肉が滑って飛んでいかないだろうかとか、不吉なことばかり考えていましたが…

 話しを聞いた巽さんと秋一さんは、思いっきり笑われたのです。
 ひどい…僕は本当に恐かったのに…

「亮が迅を襲ったって?迅が裸に剥かれたんだって?」
「あれすごく力いるんだよ?亮も本気を出したらそれくらい出来るんだね」

 とか、沢山恥ずかしいことを言われました。
 だんな様も少しだけお笑いになっていたので、僕はほっとしました。
 明日こそ失敗しないように頑張ります。