亮の日記

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 今日はお茶会でした。
 この数日はこの事で頭がいっぱいで、日記を書く事もできませんでした。
 みなさん今日は巽さんが買ってこられたチャイナ服を着ていらっしゃいましたが、僕は恥ずかしくってどうしても着ることが出来ませんでした。それに、何か失敗して汚してしまったら…ほんとうに、とても綺麗なブルーで豪華な刺繍がしてあるのです。台所仕事が多いので、緊張して油染みでも作ろう物なら…巽さんにお願いして、仕事が全部終わった後でこっそりお部屋で着ることにして許して頂きました。

 だんな様のは黒地に紺や濃いグレーの刺繍で、良くお似合いで、見とれてしまいました。暫くぼーっと見ていたのでしょう、だんな様も僕の視線に気付かれ、睨まれてしまいました…でも、睨まれて恐いと思う以上にどきどきして緊張してしまいました。巽さんは紫、秋一さんはグリーン、板井さんは茶色、メイドの女の子達は赤やらピンクやらで、お屋敷全体に花が咲いたように明るくなりました。

 僕はお茶の順番を間違えないようにとかお作法を間違えないようにとか、途中から頭がいっぱいになりました。失敗はしなかったのですが、何をやったかも覚えていないので、もしかしたら失敗したことも都合良く忘れてしまったのかもしれません。でも、楽しかったです。皆さんの楽しそうなお顔はちゃんと覚えていますから。

 お仕事が終わって自分の部屋で寛いでいると巽さんがいらっしゃいました。僕にチャイナ服を着せるためです。恥ずかしかったけれど着替え、巽さんが淹れて下さったお茶をいっしょに頂きました。

「ほら、やっぱりよく似合っている」

 そうおっしゃいながら、写真を撮られてしまいました。途中で秋一さんもいらっしゃって、みんなで写真を撮りあいっこしていたら、恥ずかしさもなくなりました。写真は巽さんがパソコンで編集して、印刷して下さるそうです。メイドの女の子達も、自分たちで沢山写真を撮ったのですって。僕は覚えていないけれどお茶会の時もとっていたそうで、後から僕に見せてくれるのですって。だんな様もうつっているのかな?
 
 秋一さんも巽さんも素敵だったけれど…だんな様のチャイナ服姿は本当に素敵で、僕の記憶の中にはっきりと残っています。きっと一生忘れないと思います。