ユリアスとシリル
光りある者・番外
10
クラクラするようなキスの合間にどうでも良い質問ばかりされた。この数日、何があったかとか毎日電話でも聞かれたことだったし、何と答えたかも覚えていない。どうしようもなく疼く身体をくねらせ、すり寄せ…自分では大嫌いだと思っている身体も、ユリアスには触って欲しいようだ。
「ユリアスさま…あぁ…」
ワインの酔いと身体を包み込むユリアスの身体から伝わる熱で、湯冷めした身体に温かさが戻ってくる。そうなると眠気も最高潮で…
「シリル…?」
「…ん…んん…」
「眠いのか…?」
深い声も心地よい眠気を引き寄せる。
「ふ…ん…」
「眠るな」
そんなこと言われても…
ずっと待ってたんだから…電話してくれたら、飲んだりしなかった。寂しさを誤魔化すために酔いつぶれようなんて考えなかった。
「そのまま眠っていても良いぞ…」
どっちなんだよ…と朦朧とする頭で考えていたら、背中を優しく撫でていてくれた手がすっと腰に降り、男にしては丸みを帯びた尻をやんわりと撫で始めた。ずっと疼いていた下半身に痺れるような快感が走る。
「ふぁ…ん…」
我慢できずに腰を蠢かすと、ユリアスの手はもっと大胆になっていった。
「やっ…だめっ…!」
下着ごと脱がせたパジャマのズボンを床に放り投げ、シリルの白く柔らかな太ももを割り開く。
羞恥で死んでしまいそうだったが、身体は望んでいるのか自分でも分かるくらい熱くたぎり、ずくん、と疼くたびにそこから何かが溢れ出す。自分では触ることも出来なかった部分を指で弄られ、抗えるのだから抗えばいいのに、二本の腕はどうしようもないことに顔などを隠そうとしている。
腕を上に上げた拍子に身体が仰け反り、突き出された淡い色の胸の飾りをユリアスの舌が捕らえる。
ちゅ…と湿った音を立てながら乳首を吸い上げられ、シリルは喘ぎを一段と高くする。何をされても感じてしまう自分の身体が忌々しい。
「は…あっ…あぁ…ん…んんっ!」
力が入らなくなった下半身はユリアスが無理に力を入れなくてもだらしなく開ききり、されるがまま快感を追い求めている。
「ユリアスさま…もう…だめっ…ああっ…」
「いけるか?」
優しい声でそんなことを聞かないで欲しい…
答える変わりにユリアスの頭をかき抱く。
「シリル、お出で」
ユリアスがシリルの腕から逃れ、両足をがっちり掴みその間に身体を割り込ませる。密着していた身体が離れ、急に寂しくなり、シーツをたぐり寄せて抱き締めてしまった。お腹の辺りでユリアスが微かに笑ったような気がしたが、次の瞬間、ユリアスに大きく足を持ち上げられ誰にも見せたくない場所に口付けされ…
「あっ!ああっ…ユリアスっ!やめてっ!!見ないでーっ!」
一気に現実へ引き戻されたが、逃げようにも快感で麻痺したような下半身は自分の言うことを聞いてくれない。耳を覆いたくなるような水音と、股間に張り付くユリアスの頭が揺れる様子に全身の血が沸騰する。
ぬるりとした舌の感触がまた新たな快感を生み出し、シリルの理性を吹き飛ばそうとする。
どこまで自分を変えなくてはいけないの?
愛する人との行為とはいえ、一生目を背けていても死ぬほどのことはない。こんな思いを暴かれるなら、もう一緒にいられなくても良いから、愛人でも恋人でもいいから作って俺を一人にしておいて、そう叫びたかった。
また余計なことを知ってしまった気がする。
散々舌で嬲られいってしまった後に抱き締められてキスされて、そんな時間はたとえようもないほど幸せだったけれど…
「シリル?」
背中を向けてしまったシリルを訝しみ、ユリアスが背後からそっと抱き寄せ頭のてっぺんにキスしてきた。こういう優しい愛撫は好きだ。
「どうした?辛かったのか?」
シリルの微妙な感情も読み取ろうとする。それをもっと前にして欲しかった。信じて欲しかった。そうしたら何事もなく平和で、いずれ愛し合うようになったはず。
「辛いです…今更こんな事…」
「この数日、ずっと辛かったか?私と会いたくなかった?」
「そんなことは…」
「会いたいと、私をずっと呼んでいたが…」
「そりゃあ会いたかったよ!…でも…こんなことしたかったんじゃない…」
「私のために身体の手入れをして、私の好きな香りを纏って?」
「…そうだけど…俺はただ昔のように…時々側にいるくらいで…こんなこと出来ないと思ってたから…」
「出来ただろう?私がお前に与えるはずだったのに、奪ってしまった事を教えてやりたかった。身体を重ねて愛し合うことがどれだけ甘美で素晴らしいことかを…」
「…でも…俺…どんなに頑張ってもヴァンサンみたいに綺麗じゃない…自分では見たくも触りたくもないのに…どうして…一番好きなユリアス様に…こんな」
「…うじうじ悩むな」
目が、飛び出るかと思った。そのくらい、驚くべき台詞だった。
シリルは、本気で怒っているのに笑い転げるユリアス目がけて枕を叩き付け、抱き寄せていた力が弱まった隙にベッドから転がり出た。
「信じらんないっ!!俺が!どんだけ悩んだとっ!!むかつくっ!!もう一緒に寝てやんないっ!!」
快楽でどんより重くなっていた腰も、怒りには勝てなかったのか、よろよろしながらも動いてくれた。ユリアスの寝室から飛び出て自分の部屋へ向かう。追いかけてこられたら嫌なので急いで部屋へ入り、扉の前にソファーでバリケードを作った。明日、簡単な鍵を買いに行こうと心に決め、サイドテーブルに放置してあったワインを引っ掴むと、半分ほど残っていたワインを一気に飲み干す。ユリアスの高いワインだが味などどうでも良く、早くアルコールが回ってぶっ倒れるように、部屋の中を三周ほどぐるぐる回る。酔っぱらったのか目が回っただけなのか分からないが、頭がぐるぐるしてきたので大急ぎでベッドに潜り込み、一秒でも早く眠れますようにと必死で祈ったのだった。
翌朝、カラスの行水を済ませた後急いで日曜大工の店に向かったが、時間が早すぎて開いていないではないか。仕方がないので某有名チェーンのカフェで店が開く時間までダラダラ過ごす。
あと10分程で開店、と言う頃に嫌な車がカフェの前をゆっくり通り過ぎ、カフェを少し過ぎたところで静かに停車した。
ユリアスの車だ。
無視して通り過ぎると、シリルの後を付いてくる。
日曜大工の店に入り、目的の鍵を色々と吟味する。
「横にスライドさせるやつで良いよね…」
ノブごと交換しようとしてサイズが合わなかったり作業が面倒だったりは嫌だ。ねじで六カ所止めるだけのならバカでも出来る。ドライバーも買って、喜び勇んで店を出て、大急ぎで家に帰る。ユリアスの車もずっと付いてきていた。以前、エヴィアンの屋敷から逃げ帰ったことがあるので、またどこかへ行ってしまいやしないかとでも思ったのだろうか?
ユリアスの前から姿を消す等という考えは頭にはないけれど、これからどんな関係で付き合っていきたいのか、シリルの気持ちだって考えて欲しいのだ。幾ら考えても結果なんかでないかもしれないけど…一方的に無理矢理与えられるだけの快楽なんて欲しくない。もっと慎み深く愛し合う方法だってあるのじゃないか…
鍵を取り付けながら考えを巡らせてみたけれど良い方法など思い浮かばず、そんな考えが乙女じみていておままごとのような綺麗事だとも気が付かない、経験値マイナスに逆戻りしていたシリルだった。
「気が済んだら下に降りてきなさい」
取り付けた鍵をがちゃがちゃ言わせていたら、部屋の外からユリアスがそう声を掛けた。そろそろ自分の店も開けなければならない時間だ。家にいるよりは店で働いていた方が危なくない。盛りの付いた獣が昼夜関係なく襲ってくる事は経験済み。
朝から気配は感じていたけれど、姿を拝んだのは半日ぶりだ。
ユリアスが後部座席のドアを開けて、シリルが乗り込むのを待っている。朝からこざっぱりした嫌みなくらい良い男だ。車になんか乗るもんか、とばかりに無視して、歩いて店を目指す。ユリアスがいない平日は徒歩通勤なのでなんてこともない。スタスタ歩いていると、後ろからユリアスの気配が近づいてきたのでどうやら諦めて徒歩で付いてきたようだ。
店までは歩きでも15分程の距離。つかず離れずの距離を保って付いてくるのは、ユリアスにしては上出来だ。
店について開店準備を始めると、ユリアスは言われなくても自分の仕事をやる。掃除は閉店時に済ませるので、テラス席を出し、冬はテラスの各席に膝掛けも置く。外に面したガラス窓を拭き、店の周りの雪や氷を綺麗に退けてお客さんが滑って転ばないようにする。
再会したばかりの頃は粗末な椅子にふんぞり返っているだけだったので、その頃に比べたらユリアスも相当変わった。産まれてこの方自分の机の上の埃も払ったことが無い貴族の当主が、シリルに言われるまでもなく、見よう見まねで手伝ってくれるようになったのだ。
なのに自分は…
でも、我慢できないことだってある。自分にとってタブーなことを強要されるのがどれだけ辛いか、ユリアスに知って欲しい。
言葉を交わさなくても気まずい思いはおきない。それが蛇と光りの血族の不思議な関係でもある。ユリアスが頼みもしないのに出てきた昼食を平らげた後、何も言わないで店からいなくなった。一時間ほどで帰ってきたときには手に大きな荷物を抱え、その中身は自分や常連達への差し入れだった。
「ありがとう…これ、さっきみんなで噂してたやつ…」
新しく出来たチョコレートショップで、行列に並ばないと手に入らない。最低でも30分は並ぶので、誰も買いに行きたくなかったのだ。
仏頂面で並んでいたのだろうか?
想像するとかなり笑えた。
「お前とアンリの分は別にしてあるから、常連に振る舞うと良い」
「うん、そうする」
それ以降はユリアスとも普通に話せた。ユリアスだって少しは悪かったと思ってくれてるのだろうか?
「昨日さ、夜中に大げんかしてたのはどこの誰?」
朝から学校の用事で出掛けていたアンリがシリルのカフェに寄ったのは夕方くらいだった。
昨夜、仲良さそうな声がしているかと思ったら途端にシリルの悪態とドタバタ走り回る音がした。今朝は早くから出て行ったっきりでその後二人がどんな一日を過ごしたのか知らないが、夕方にはすっかりシリルの機嫌もなおっていた。まさかこのチョコレートのお陰じゃないよな、たったこのくらいのことで収まるなら最初から大人げないこと何かするなよ、と思ったが…
「ごめんねアンリ。寝られた?」
「慣れなきゃね。夫婦げんかは犬も食わないって言うし。でも、その様子じゃ大丈夫みたいだね。今夜はちゃんと寝なきゃ、髪もお肌もボソボソだよ、シリル」
いつのまにこんなませたガキに育ったのやら、この事も少しユリアスと話さなければならないとシリルは感じていた。せめて、もうすこし、あの家にいるときは気を遣ってもらわなければ…
待ち焦がれた数日間とは打って変わり、姿が目に入るほど近くにいるとシリルの気持ちは自分でも笑ってしまうくらい落ち着いた。ユリアスも昨夜で懲りたのか、強引さはなりを潜め穏やかで紳士的な態度を取っている。
「じゃあ、俺、今日は早めに寝ます」
そう言っても、優しく微笑んでおでこにキスをしたくらいですんなり解放してくれた。
だがユリアスへ対する気持ちが収まっていたのも二階の自分の部屋へ入って鍵を閉めたところまで。
いや、鍵を閉めようとドアを見ても、ねじ穴が残されているだけで、スライド式の簡単な鍵はどこにも見あたらないではないか。
「なんで…どういう事?」
いったい誰が…昼間は全員出払っていた。アンリは学校だし、こんな事をする必要など皆無だ。ユリアスは…一時間ほど、姿をくらました。それであの落ち着き払った態度…
シリルは急いで階下へ降りると、居間のソファーに座りビンテージワインのコルクを開けようとしていたユリアスに詰め寄った。
「ユリアス様、俺の部屋の鍵…!」
「必要ない」
「俺がそうしたかったからっ…なんで断りもなく、勝手に外したんだよ!」
「私に断りもなく鍵を掛けたからだ。なぜ、ああする必要がある?」
「一人になりたいときだってあるし…俺のプライバシーは守って欲しい。嫌だって言うことはしないでよ…」
ユリアスは別に怒っている風ではないが、全く聞く耳も持とうとしないようで、用意してあった二人分のグラスにワインを注いだ。
「嫌がることをしたつもりはないぞ?」
「嫌って、はっきり言ったよ…」
差し出されたワインを受け取り、乾杯もせず、香りも味も楽しまず、ぐっと一息で飲み干す。
「あれは…睦言かと思った」
「なっ…!」
くっ、と笑うユリアスにシリルの怒りが最高潮に達する。手にしたグラスを投げつけたかったが後で片付ける時の惨めさと言ったら無い。静かな怒りを沸々とたぎらせながら丁寧にグラスを置く、怒りで震える身体をようやっと立ち上がらせ、その場を離れようとした。
「シリル、まだ話しがある」
「俺にはないよっ!」
「離れていた数日間、お前は何を考えていた?私はお前のことしか考えていなかった。抱き締めて、口付けをかわし、私の腕の中で可愛らしい声を上げるお前を」
「変態っ!!」
「言ってくれるな…お前もそうされたいと望んでいたと思ったのは私の錯覚か?」
「程度ってものがあるだろ?嫌だって言うのを無理にするのは暴力だ」
「ふっ…」
鼻で笑いやがった…殴ってやろうか、こいつ!
拳を握りしめたが、震えるだけで腕を振り回すことなんかできなかった。
「俺は…あんなこと…っ」
「お前に快楽を教えるのは、私だけだ。少し、遅くなったがな…」
「俺はっ、知りたくないっ!あんなことされるのだったら、ずっと一人で良いっ」
「私がいなくても良いのか?」
側にはいたい。けど、もう惨めな身体を晒したくない。
「シリル、私はお前がいないと生きていけない。どんなに泣こうがわめこうが嫌がろうが、手の中に抱き締めていたい。愛しくて…たまらない」
そう言いながら立ち上がったユリアスはそっとシリルに近づき、手を差し伸べる。その手を掴んで当然だとでも思っているのだろうか?
でも…愛しくてたまらないのはシリルだって同じだ。愛情表現がお互いに違うだけで、それ以外は…
じっとユリアス様の手を見る。
その手が与えてくれる物は、死んだ方がましな快楽以外にも沢山ある。
「嫌なことは…しないで」
「した覚えはない」
「した」
「どんなことを?」
「…いやらしいこと」
「恋人同士の営みが嫌なのか?」
「あんなことするくらいなら恋人じゃなくて良い。他に愛人がいても恋人を作っても良いから、二度と嫌だ。でも…そばにはいたい」
心がずきんと痛むのはどうしてだろう。再会してからずっと思っていたことを言っただけなのに。
「昔のように?」
「…うん」
ユリアスは、うなだれてしまったシリルの手をとり、少しふっくらと柔らかくなった手の甲にキスをしたが…
「却下だ」
そう言い放つとシリルをぐっと抱き寄せ、引きずるように二階の寝室へと連れ込んだのだった。
「ちょっ…!なにすんだよっ!」
「死にたくなるような恥ずかしいこと」
ふふっ、とか、くっ、とか笑いながらベッドに放り出す。
「うぐっ…!」
何か言いかけた瞬間にベッドへ落下したのでそんな情けない声しか出なかったじゃないか。
ユリアスがシリルの上に覆いかぶさってくる。心地よい重さとユリアスの香りでほんの少しだけどきっとした。
「シリル…今少し感じたか?」
もうばれたのか。
「感じてなんかないよっ!」
「シリル…お前が本当に嫌がっているのなら私には分かる。私がお前以外の誰かとこんな事をしていても平気なのか?」
「ど、どうでも良いよ。平気だよ…」
「嘘だな。光りが…薄くなっている」
この人には永遠に叶わないのだろうか。
「こうすると…分かるか?今は引っ込んでいるが、私に絡みついてくる…」
腰を抱き寄せてキスされると、シリル自身は借りてきた猫のように大人しくなり、光りはもう少し積極的に、26才の成人男子らしく、ユリアスの炎に絡みつく。
「ふぁ…っ」
キスだけで、100メートル全力疾走したのかと思われるくらい心拍があがる。
「でも…ユリアス様、俺…」
「何度も言わせるな。お前が二目と見られぬ醜い人間でも私には愛しい存在なんだ」
ユリアスはまだまだ手入れ不足でこんがらがった髪を指先に絡ませ、口づける。
「このボサボサの髪も…かさかさの肌も…」
シリルの膝小僧を優しく手の平で覆う。
「ちょっと大きめの尻も…」
「触っちゃ駄目!」
膝から太ももの裏を撫で上げ丸い尻を掴もうとしたのだが…
「まあいい…それから、私が傷つけてしまったここも…」
「だめーっ!!」
「シリル…私の愛撫で愛液を溢れさせたくせに?愛らしい声で散々私を煽ったのはどこの誰だ?」
帰ってきたばかりで着替えてもいない、ジーンズの上から股間を触られる。
「やめっ…!」
ゆっくり揉まれるとどうしようもない痺れがそこからわき起こる。
「だってっ!ユリアス様が好きだから…醜いものを…見られたくないっ」
「思いこみすぎだ。皆が必死で治療してくれた。お前もそれを乗り越えた。その印が醜いものであるはずがない」
ジジ…とファスナーが降ろされる音がする。
「でもっ!ユリアス様、なんにもしないし…てか…冷静だし…俺じゃだめなのかな…って…」
「は?」
「だって…俺ばっかで…ヴァンサンもびっくり」
ユリアスは半ば乗り上げていたシリルの上から降り、隣に並んで寝ころぶと、くっついていちゃつくのは嫌では無さそうなシリルを抱き寄せる。
「ヴァンサンとどんな話しをしたんだ?」
「んと…ユリアス様にはヴァンサンの他に三人くらい愛人がいて…すけべオヤジなのに俺と再会した途端誰にも手を出さなくなって…その…俺ともちゃんとしてない?」
「シリルは私とちゃんとしたいのか?」
「そう言う分けじゃ…ユリアス様がしたくないみたいだったから…俺は魅力無いんだろうなって…なのに、嫌なことはする」
このどうしようもない少年は…
怖がらないように、快楽だけを知って欲しいと思ったからあれ以上の行為は控えたのだ。シリルが第二次成長期に入ったばかりの頃、自分のペニスが硬くなったり夢精したりしただけで、死ぬような病にかかったのではと泣いていた。白くて小さな果物のようなペニスに大人の快楽を教えるには忍びなく、甘やかして育てたせいか13才にしては子供っぽかったのでもう暫く大切に育てるつもりだった。
ちゃんとする、には嫌なことも沢山しなくてはいけないのに…
「ちゃんとするのはもっと後だ。羞恥心も喜びの一部で、恥ずかしくても私の言うなりに足を広げて、蜜を垂れ流して、腰をくねらせながら可愛く啼けるようになったら、な」
火を噴きそうな程みだらな台詞を吐かれ、シリルは気を失いそうだったがかろうじて意識をつなぎ止める。ここで気を失えば何をされたものだかしれない。
「そ、そ、そそんな事、ぜったいやだ、ぜったいしないから」
「だが、指や…舌で弄られて気持ちよかっただろう?もう何度もいったはずだ…」
「しらないっ!」
シリルはまだ、心の中は子供のままなのだろう。大きな矛盾もなんのその、嫌だ、知らない、と言いながらユリアスにしがみついて首を横に振り続けている。
呆れて笑いがこみ上げるが、それも直ぐに愛しさに変わる。
「シリル、ゆっくり風呂に浸かって、綺麗になっておいで。髪も丁寧に洗うように。梳いてあげるからブラシと…ボディーローションも持ってきなさい」
「ユリアス様が髪を梳いてくれるの?」
「ああ。髪も肌も心も、私が美しく輝かせてあげよう」